ニッケイ新聞 2012年11月14日付け
連邦最高裁は12日、第1次ルーラ政権(2003〜06年)で05年まで官房長官をつとめたジョゼ・ジルセウ被告(労働者党・PT)に対し、メンサロン事件の主犯者として贈賄と犯罪組織形成のかどで禁錮10年10カ月の判決を下した。ブラジルの裁判史において、政府の要職に着いた人物に禁錮刑が下るのははじめてのこととなった。12日付伯字紙が報じている。
ジルセウ被告への禁錮刑は、贈賄で7年11カ月、犯罪組織形成で2年11カ月の計10年10カ月で、67万6千レアルの罰金刑も科せられた。刑務所以外の場所に収監されたり、刑務所外での労働が認められるセミ・アベルト適用までの最低投獄期間は1年9カ月となる。
判決内容は全員の刑が決まって官報に掲載される前に見直される可能性はある。官報掲載は2013年の見込みだが、判決が覆されない限り、ジルセウ被告は85歳となる2031年まで被選挙権を失うため、議員生命は実質的に絶たれる。
また、12日にはジルセウ被告以外の3人の被告に対する刑の算定も行なわれた。PT元党首のジョゼ・ジェノイーノ被告には禁錮6年11カ月と46万8千レアルの罰金刑、PT元会計のデルービオ・ソアレス被告には禁錮8年11カ月と32万5千レアルの罰金刑、マネーロンダリングなど四つの罪状で有罪となった農業銀行元頭取のカチア・ラベロ被告には禁錮16年8ヵ月と150万レアルの罰金刑が科せられた。ジェノイーノ被告の刑期は8年未満なのでセミ・アベルトが適用される。これで、メンサロン裁判で刑の算定が終わった被告は25人中8人となった。
ジルセウ被告に禁錮刑が科せられたことは、ブラジルに新たな歴史を刻むこととなった。通常、政治家への裁判は罰金刑などで済まされることがほとんどで、メンサロン事件同様に議会からの連邦政府支持を取り付けることに端を発した1992年のコーロル大統領弾劾の際でさえ、禁錮刑には及んでいなかった。
判決結果は欧米メディアからも注目を浴び、英国BBCなどは「ブラジルの政治に今後も大きな影響を及ぼしつづけるはず」と報道した。ブラジル内でも「民主主義の前進だ」と喜ぶ声も多い一方、軍政時代に民主主義を叫んで闘ったジルセウ被告の経歴を考慮し、投獄不可避という結果を残念がる声も聞かれた。
また、12日の公判は金融関係者への刑算定のはずが政治家への算定に変わったため、リカルド・レヴァンドウスキー報告官が「ジョアキン・バルボーザ次期最高裁長官が判決順位を独断で覆した」と不満を表明、不快な面持ちで途中退出した。厳しい判決を下して世論の共感を得てきたバルボーザ判事だが、今後も次期副長官のレヴァンドウスキー氏との対立が続けば、同様の裁判での対立につながらないかが懸念される。仲介役でもあったアイレス・ブリット現長官は、18日に定年退職を迎える。