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エイズ=1年で3万8776人罹患=胎内感染は1日1人=陽性と知らぬ患者25%=偏見が診断を遅らせる?

ニッケイ新聞 2012年11月22日付け

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が20日、治療薬と予防薬の普及でエイズを克服できる日が近づいているとの見解を示したが、ブラジルでは2011年に新しい患者が前年の3万7358人を上回る3万8776人登録され、胎内感染と見られるケースも469件確認されたと保健省が発表したと21日付伯字紙が報じた。

 世界的には新しい患者の発生が減少する中、ブラジルでは前年を上回る患者の発生が確認されたという報道は、偏見や無知がエイズの早期発見を遅らせ、対策が後手に回る実態を浮き彫りにした。
 UNAIDSによると、2011年末のエイズ患者の数は3400万人で、内250万人が昨年発生した患者だ。新しい患者の発生はここ10年で約20%減っており、死者の数も、2005年の230万人が2010年には180万人、11年には170万人と減少傾向にある。
 UNAIDSが特に注目するのは14歳以下の患者の数で、2003年から2009年の減少率は23%だったが、09年から11年が24%減り、年約30万人になったのは胎内感染の減少が原因と見ている。
 患者減少への取組みが加速化し、妊娠中や出産時の投薬で完全に防ぎ得るとされるのが母から子への胎内感染だ。だが、ブラジルの場合は、11年も子供の患者が469人確認されており、感染の事実を知らず、治療を受ける事もなく過ごしていた子供も発見されている。ブラジルの5歳未満の子供の罹患率は10万人当たり5・4人で、2006年からほとんど不変だ。
 10年から11年にかけての10万人当たりの地域別罹患率は、南伯が29・1人から30・9人、南東伯が26・6人から21人、中西伯が16・4人から17・5人、北東伯が13・7人から13・9人に上昇。北伯は20・9人から20・8人とやや減少したが、2000年の6・9人と比べると3倍だ。
 ブラジルの患者総数は53万人で、2011年に感染した患者は3万8776人、死亡率はやや低下したがそれでも年間1万2千人が死亡と報告された。25・4%に当たる患者(13万5千人)は自分が感染している事を知らなかったというが、末期になって発見された患者の割合は、06年の31・2%から29・2%に改善した。
 早期発見例は5年間で32%から36・7%に増えたが、保健省は、ブラジルでは偏見のために検査を受けたがらない人が多いため、現在は5台しかない、短時間で診断が出来る検査用キットを積んだ巡回車両を2013年には各州都に1台ずつ配備する意向だ。アレッシャンドレ・パジーリャ保健相は、新しい患者の大半は15〜24歳の若い男性の同性愛者で、おかま(トラベスティ)や売春婦の感染も多いと注意を促している。