ニッケイ新聞 2012年11月23日付け
連邦最高裁(STF)のジョアキン・バルボーザ判事(58)が22日に最高裁長官に就任し、黒人初の最高裁長官が誕生した。同日はブラジリアで盛大な式典も行なわれた。23日付伯字紙が報じている。
アイレス・ブリット氏から長官職を受け継いたバルボーザ氏は、8月からのメンサロン裁判で世間の注目を一身に浴びた「時の人」だ。バルボーザ氏は報告官として厳しい立場を取り続け、元内閣官房長官のジョゼ・ジルセウ被告(労働者党・PT)や、ジョゼ・ジェノイノ被告(PT)、ロベルト・ジェフェルソン被告(ブラジル労働党・PTB)といった政党党首も顔を揃えた裁判で、37人中25人の有罪を導きだし、「政治の要人はお咎めなし」が慣例とされていたブラジルの裁判史を覆した。
この判決結果はブラジル民から「快挙」と受け止められ、マスコミはこぞってバルボーザ氏を絶賛し、一般社会からも「大統領になってほしい」とか、トレードマークの黒いマントにかけて「正義のヒーローは実在した」という声もあがった。その評判は海を超え、米国紙ニューヨーク・タイムスでも「政治界を斬った司法の英雄」として紹介された。
22日午後3時から行われた就任式も、そんなバルボーザ氏の人気を反映し、同職の式典としては異例の2千人以上の人が招待された。そのため、通常式典が行なわれる最高裁では足らず、別室にモニターを設置して式典の模様を流す異例の措置も取られた。
招待客の中にはジウマ大統領をはじめとした政界要人のみならず、俳優のラーザロ・ラモスや女優のタイース・アラウージョ、歌手のジャヴァーンといったブラジル芸能界で著名な黒人文化人も含まれ、黒人の人権問題団体のリーダーたちもかけつけた。また、バルボーザ氏がブラジリア大学やフランス、米国の大学で学んでいた時代の学友たちも多く駆けつけた。
こうした圧倒的な人気と高い注目度と共に最高裁長官となったバルボーザ氏だが、不安の声が全くないわけではない。特に気になるのは、同氏と共に副長官に就任するリカルド・レヴァンドウスキー判事との関係だ。レヴァンドウスキー氏はメンサロン裁判中、被告の罪状や同事件の定義づけをめぐって幾度も対立を繰り返していた。
また、同僚判事への批判を辞さず、あらかじめ確認してあった裁判の手順を当日になって独断で変更したりして、裁判を迅速化させようとするやり方は、世間受けはするものの、他の判事の意向を無視しかねないとして心配する声もある。