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10月の失業率は5.3%=求人が求職者を上回る=労働市場の頭打ち近し=景気回復時は人手不足に

ニッケイ新聞 2012年11月24日付け

 地理統計院(IBGE)が22日、7〜10月の労働市場は過熱気味で、10月の国内主要6大都市圏の失業率は、月間記録としては現行の計測方法が導入された02年以降最低の5・3%になったと発表したと23日付伯字紙が報じた。

 10月に記録された失業率5・3%という数字は9月の5・4%と大差がないように見えるが、実際には求職者も増えており、正規雇用者の増加が求職者の増加を上回ったという事が判る。
 過去12カ月の雇用創出数は68万4千で、正規雇用者数は昨年10月比3%増加した。特に、7〜10月の正規雇用者は57万人増え、過去12カ月の増加数の83%を占めている。
 また、雇用拡大と共に注目されるのが所得向上で、10月の平均所得は9月よりも0・3%アップ。昨年同月比では4・6%向上している。
 所得の向上は、求人数が求職者数を上回っている事からも理解できる現象だ。正規雇用者が増えた事もあり、10月に支払われた給与総額は422億レアルで、9月の支払い総額の1・6%増、7月からの4カ月間ではほぼ5%増しで、昨年10月からでは7・9%増えている。
 給与が上がれば、年末の必要を満たすための短期労働者も含んだ求職者増は当然だが、求人数がそれを上回る勢いで増えたために失業率が下がってきているという事は、景気が少しずつ回復している証拠でもある。ブラジリア大学経済学教授のジョルジ・アラバッシェ氏は「経済成長が年1・5%程度といわれる中でも実質給与が上がり続けているのは、労働市場が加熱している事の反映」と表現している。
 ただ、失業率の低下は6大都市圏全体で起きた訳ではなく、大サンパウロ市圏とベロ・オリゾンテ周辺では、9月は6・5%と4%だった失業率が5・9%と4・0%に低下したが、他の4都市圏では、5・7%が6・7%になったレシッフェを筆頭に0・2〜0%ポイント高くなっている。
 失業率の低下と所得向上は共に明るいニュースだが、気がかりなのは、労働市場の頭打ちが近いというフォーリャ紙の表現だ。失業率が最も低いベロ・オリゾンテとポルト・アレグレの3・9%といった数字は、景気回復が本格化して求人数がさらに増えた場合には、市場に投入できる労働者が限られているという意味でもあるからだ。
 エスタード紙は、最近の新規雇用の4人に3人は、学歴や経験のない非熟練労働者でも務まる商業やサービス部門に就職しているとして、「失業率が低い=質の高い労働者が多い」ではないという現実を指摘。景気過熱時に予測される人手不足は、技術や知識、経験のある質の高い労働者だけではなく、非熟練者さえ雇えない企業が増える事も意味する。国際的な競争力に欠ける事が輸出不振や景気回復の遅れの一因とされるブラジル企業にとり、景気回復=安泰、繁栄ではなくなってきている。