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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年11月24日付け

 あの信長や武田信玄が武勇を誇った戦国時代、敵の領地に軍隊を派遣し侵略することを「出張る」と呼ぶ。北は赫赫たる武勲に輝く伊達政宗らが獅子奮迅の活躍をし、南では薩摩藩の島津義弘、家久が朝鮮に出兵し功績をあげ、韓国人の陶工・沈寿官を伴い帰国し黒ジョカなどの「薩摩焼」を成功させた。この「出張る」ではないが、日本の尖閣国有化宣言から始まる中国船の傍若無人な振る舞いがもう1カ月余も続く▼これらの中国監視船は、尖閣海域と公海の接続水域を連日航行しており、領海侵犯もしている。監視船の目的は、云うまでもなく—斥候や偵察ではなく、索敵でもない。つまり、国有化宣言に対する「威嚇」と捉えていい。こうした悪意に満ちた手法は南シナ海でのフイリピンやベトナムとの領土争いでも見られる中国のやり方であり、日本はもっと警戒の意識を高めたい▼これだけではない。中国に進出している邦人経営の店が被害を受け、輸出産業の花形であるトヨタなどの自動車も売れない。こうした不買運動は広がり、日本企業は悲鳴を上げており、インドやアジア諸国への移転も重要な検討課題になっているのはご承知の通りである。これは大きな潮流となっており、数多くの企業が現地に工場を建設し大きなブームにまでなっている▼この危機感は日本の政界にも強く、自民党は政権公約に「尖閣諸島に公務員を常駐させる」の1項を掲げ話題になっている。果たしてここまでの処置が必要なのかについては、議論もあるだろうが、こんな考え方が—物言わぬ庶民たちの「本音」でもあるような気もする。(遯)