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アルゼンチン=クラリン社の嘆願を却下=メディア法の正式制定へ=民法の全国放送不可に?

ニッケイ新聞 2012年11月29日付け

 アルゼンチンの最高裁が27日、メディア大手クラリン社によるメディア法の適用開始の再延期を求める訴えを却下した。これにより、クリスチーナ政権が進める同国でのメディア規正が強化されそうだ。28日付伯字紙が報じている。
 アルゼンチン最高裁は27日の判決で、ブエノスアイレスの連邦商業民事法定のオラシオ・アルフォンソ判事が、メディア法第161条が合憲か違憲かを即座に判断するよう定めた。
 クリスチーナ政権が改正したメディア法は2009年に議会で承認されたが、161条ではテレビのチャンネルやラジオ局の寡占を禁じている。この条項の適用は12月7日まで延期されていたが、再延期が実質的に拒否されたことで最も犠牲を強いられるのは、国内最大手のクラリン社だ。
 同社は同国最大の発行部数を誇る新聞や全国放送のチャンネル「エル・トレーセ」、「カブレヴィジョン」をはじめとするケーブル・テレビ・チャンネル7局を持っており、161条が適用されれば、1年以内に事業の縮小や廃止を迫られる。クラリン社は同条項の適用を再度延期するよう求めていた。
 改正メディア法によると、アルゼンチン国内のテレビ局は国営放送局、教会など非営利の局、民間放送局のシェアが3分の1ずつとなり、民間放送局の放送免許は24までしか認められない。また、民放はローカル放送のみとなり、クラリンの放送圏はブエノスアイレスとその周辺のみに限定される。これにより、コルドバ、メンドーサ、ロザーリオなど他の主要都市での放送ができなくなる上、同一地域では普通のTVとケーブルTVの両方の局をもつことが禁じられ、一方を手放さなければならない。全国放送が認められるのは、国営のTVプブリカやカトリック教会、連邦大学が持つ局のみになる。
 クリスチーナ大統領は12月7日を「政府への中傷の終わる日」と位置付けている。クラリン社は、同大統領の夫で前任者のネストル・キルチネル氏の代から一貫して政権批判を展開している。
 クラリン社や表現の自由保護を求める民間団体は、政府が最高裁に圧力をかけているとして政府を攻撃。アルフォンソ判事の周辺では、自宅前に停めた車の中の人物が娘の写真を撮ったり、脅迫まがいの電話がかかったりしているという。また米州報道協会は、改正メディア法がアルゼンチン国民の表現の自由を侵害しないか、委員を派遣する予定だという。
 一方ジウマ大統領は28日、ブエノスアイレスを訪れ、クリスチーナ大統領と「親睦を深める」ために昼食を共にし、政治や経済の話をした。