ニッケイ新聞 2012年12月12日付け
サンパウロ市東部にクラックの中毒の妊婦が増えてきたことを懸念し、クラック中毒者の母とその子どもを特別に扱っている産婦人科があり、その実態を10日付フォーリャ紙が報じている。
レオノール・メンデス・デ・バロス産婦人科医院では近年、クラック中毒の妊婦の取扱件数が急増している。07年に同院で出産したクラック中毒者は5人だったが、年々10〜15人増え、2012年は12月7日までに前年比22人増の75人に達している。
クラック中毒者の出産では、胎盤剥離や早産、低体重出産、泣きや吸いが強い子供誕生の可能性があり、出産後も特別な注意を要する。レオノール産婦人科ではクラック常用が疑われる妊婦が出産すると社会福祉士に連絡をし、児童青少年裁判所が母親に親権を認めるか否か判断する。80%の場合、裁判所は子供を託児所に預け、母子双方の回復などを見届ける。07年に養子縁組した子供は2人だが、12年は既に25人になった。
母親に親権を認めるか否かの判断は時間がかかり、母親が退院しても子供は同院に残る例が大半だ。同院で3日に出産、4日にクラック使用を認めた女性の場合も、裁判所の判断が出た7日には母親は退院済みで、子供は病院に残っていた。
同院で今年生まれた子供75人中、母親と共に退院できたのは20人のみで、あとの55人の将来は裁判所の判断に委ねられている。これはクラック中毒者の多くが路上生活者で子育てに適した状況にいないとか、精神的に安定していないなどの原因により、2年以内に子育てできる状況が整わない時は母親は親権を失い、子供は養子に出されることとなる。
現在、サンパウロ州の公立病院で麻薬中毒の妊婦用の病床は25床しかない。サンパウロ市の対策プログラムでは今年、薬物中毒者を450人扱っているがクラック中毒者は117人。病院の数も病床数も絶対的に不足している。