ニッケイ新聞 2012年12月15日付け
ロシアのモスクワに滞在中のジウマ大統領は13日、自身が拒否権を行使した油田開発のロイヤリティ分配改正法案が19日に連邦議会で審議されることに関して、「私がやれることはこれ以上ない」と発言し、議会での敗北を覚悟していることを示した。14日付伯字紙が報じた。
油田開発のロイヤリティ分配改正案は2009年から審議され、こう着状態となっていたが、分配率が決まらないために新たな油田の入札が数年間行なわれてないことに不服の石油業界の圧力に押される形で、今年9月頃から審議を再開、11月6日に新法案が下院を通過した。
リオやエスピリントサントなどの石油産出地の州や市は、ロイヤリティの取り分を約10%ポイント削られ、大幅な減収となることから新法案に反発。11月26日にはセルジオ・カブラル・リオ州知事の指揮の下、反対デモも行なわれた。
ジウマ大統領も12月3日、リオ州などの要望にもそうよう、既に石油生産が行なわれている油田に関するロイヤリティは従来とおり分配するよう提案したほか、分配された金は油田開発のための研究費に100%あてることにするなど、議会が承認した法案の23項目に拒否権を行使した。
これによる反発はことのほか大きく、議会は13日、緊急案件として大統領の修正案に対する審議を行なうことを承認。大統領の修正案が従来のものへと引き戻されることが必至となった。
議会が再審議の実施を決めたと聞いたジウマ大統領はモスクワで、「もう私がこの件について語ることはない。やることはやった」と語り、議会が同法案に再修正を加えても議会と争う意思がないことを明らかにした。大統領は「それが仮に私の意思とおりでなかったにせよ、立法の権限は議会にある。私が議会の良心で選んだ決断を侵害するわけにはいかない」と、三権分立の理念を尊重するとした。
今回、大統領の拒否権による修正案が議会で否決されると、2005年以降、初のケースとなる。議会が大統領の拒否権を否定した例も、1988年以降議会で審議された数百件の拒否権発動例中、25件しかない。
一方、リオのカブラル知事は、13日の議会での再審議決定から約5時間後、ロイヤリティ分配の再改正を阻止するべく連邦最高裁に訴訟を起こした。この訴状にはリンドベルク・ファリアス上議(労働者党・PT)やアレッサンドロ・モロン下議(PT)、レオナルド・ピッチアーニ下議も署名している。最高裁でこの訴状を検証担当するのはリオ出身のルイス・フックス判事の予定だ。
カブラル知事は「大統領の修正案が否決されれば、法廷で戦う用意は出来ている。これは組織的な暴力だ」と議会を批判した。もし、11月に承認されたままの法案に戻れば、リオは2013年の収益で45億レアル、2030年までに1160億レアルを失うことになるという。