ニッケイ新聞 2012年12月15日付け
2010年に死んだ牛に狂牛病特有の蛋白質の変異が確認されたとの7日の発表後、日本や南アフリカ、中国がブラジル産牛肉の輸入を禁ずるなど、波紋が拡大中と12〜14日付伯字紙が報じた。
ブリオンと呼ばれる蛋白質の変異が確認されたのは10年12月にパラナ州で死んだ13歳の牝牛。今年6月に国内の研究所が異常を確認したため、再検査を依頼した英国の研究所が今月、異常ブリオンの存在を確認したと報告してきた。
狂牛病の正式名は牛海綿状脳症で、牛の脳がスポンジ状になる病気だ。発病すると、痙攣を起こしたり物音や接触に対して過敏な反応をしたりするようになり、運動機能が冒されると立てなくなる。体外から入ってきたり体内での遺伝子の異変で生じる異常ブリオンが原因との説が有力だ。
ところが、パラナ州で死んだ牛は同病特有の症状もなく13歳で急死。狂牛病は7歳前後で発病する事が多いため、国際獣疫事務局(OIE)も、狂牛病の典型例には当たらず、ブラジルは狂牛病フリーとみなした。
一方、8日にブラジル産牛肉の輸入禁止措置を導入したのは日本。13日には中国と南アフリカも同様の措置導入を決めた。2011年の場合、日本のブラジル産牛肉輸入量は1300トン、2005年の口蹄疫発見時にとった輸入禁止措置を解除したばかりの南アは293トン。中国は、ブラジル産牛肉輸入量が17万トン(世界第2位)の香港経由分を除くため、昨年の輸入量は1万トン。3国分で昨年のブラジル産牛肉輸出量の1・2%程だ。
他方、ブラジル産牛肉の最大の輸出国だが、11年6月にパラナ、南大河、マット・グロッソ3州産の牛肉輸入を禁止したロシアが、未だに輸入禁止措置解除を公表していない。ブラジルは11月末に輸入禁止が停止されたと発表したが、14日正午現在、同国訪問中のジウマ大統領にも公表時期は明かされてないようだ。同国との昨年の牛肉取引額は、3州からの肉の輸入禁止で、19億ドル弱だった10年以下の15億ドルになっており、ブラジル業者は輸入禁止措置延長を懸念している。
また、ブラジル産牛肉輸入量6位のイランが11日にブラジル産牛肉の荷降し差し止め、生きた牛や冷凍牛肉消費量の65%はブラジル産のベネズエラが輸入禁止検討中との情報も懸念材料だ。現時点でのベネズエラはパラー州の牛やその肉の輸入は継続の見込み。その他は、チリが骨粉輸入停止、米国がより詳細な情報要請などの情報が入っているが、伯農務省は、異常ブリオンが発見された地域の牛は世代交代しており、その後の検査は陰性と安全性を強調。諸国にも担当者を派遣して説明させ、理解を求める意向だ。