ニッケイ新聞 2012年12月18日付け
16日に行なわれたクラブ・ワールドカップ決勝で南米代表として戦ったコリンチャンスが、欧州代表のチェルシー(イングランド)に1—0で勝利し、2度目のクラブ世界一の栄冠を手にした。17日付伯時紙が報じている。
横浜の日産スタジアムで行なわれた決勝は、コリンチャンスの持ち味が出た試合だった。前半のチェルシーの猛攻を、〃ジガンテ(巨人)〃の愛称で知られる守護神カシオが、世界中のメディアから「神がかり的」とも称された美技の数々で乗り越え、それを凌ぎきった後半24分、ペルーからの助っ人パオロ・ゲレーロの2試合連続となるヘディング・シュートで得点に成功。この1点を守りきったコリンチャンスは、チーム創立102年目にして、今年7月のリベルタドーレス杯での南米一に続くビッグタイトルをもぎ取った。
優勝の瞬間、コリンチアーノは興奮の渦に包まれた。地球の真裏にも関わらず3万人の応援団を集結させた熱狂的な人気は日本でも話題となったが、サンパウロ市でも最大の応援団の本拠地であるボン・レチロに集まったファン2万人は、勝った瞬間、祝祭状態となった。南米最大の商業地、パウリスタ大通りでも、続々と人が集まり交通が麻痺。午後4時から祝勝会も催され、夜7時過ぎまで車両通行止めとなった。
世界一のタイトルはコリンチャンスの長年の悲願だった。サンパウロ市最大の人気チームで、リベリーノやソクラテスらブラジルサッカー史に残る名選手も輩出してきたが、サントスやパルメイラス、サンパウロFCといったサンパウロ州の他チームの全盛期と重なり続け、南米一、世界一に手が届かなかった。08年には全国選手権で2部落ちも経験した。
それからのコリンチャンスは、一つ一つを地道に勝って復活を遂げていく。09年にはサンパウロ州選手権とブラジル杯優勝、11年には全国選手権優勝と段階を踏んで上がってきた。その間、ロナウドやアドリアーノという、代表チームや欧州のクラブで世界的スターとして活躍したストライカーの補強もした。だが、それがうまく行かなかったことで逆に、チテ監督を中心に、スター選手を置かず、チーム全員で守りきる、ラ米では珍しい堅守のチームとなった。
その〃スターなき集団〃が、世界中から数億ユーロをかけて有力選手の獲得を続ける欧州の一流クラブに勝利した。クラブW杯で南米代表が欧州代表に勝ったのは6年ぶりだ。
現在は勝ち上がることで、代表レギュラーとなったパウリーニョや今大会最優秀選手となったカシオなどの有望選手を生み出しつつあるが、マリオ・ゴビ会長は、今後も選手獲得に大金を使うのではなく、練習施設の充実と若手選手育成を第一に行なって行くとし、次の目標も「13年のサンパウロ州選手権制覇」とあくまで地道だ。こうした堅実路線で、コリンチャンスは新たな伝統を熱狂的なファンの支持と共に築き上げたいようだ。