ニッケイ新聞 2012年12月19日付け
サンパウロ州、ミナス、ゴイアス州などで15日、下半期4度目の広域停電が起きた事などを受け、ブラジルでは発電・送電施設やシステムの問題が未解決のまま残されており、早急な対策が望まれると18日付伯字紙が報じた。
15日午後5時55分に発生した停電はミナス州とゴイアス州の境にあるイトゥンビアラ発電所の発電機停止が原因で、発生直後はミナス、ゴイアス、サンパウロ州の3州の電力供給が止まったとされていた。発電機停止は、イトゥンビアラ〜エンボルカサン間の送電線への落雷で大量の電気が流れ、安全装置が作動した故との説が有力で、停電地域の50%は30分程度で回復したといわれた。
ところが、実際の落雷の被害はイトゥンビアラ発電所の機械停止に止まらず、北伯や北東伯、中西伯をつなぐ送電システムと南伯や南東伯をつなぐ送電システムの連結も切断。南伯、南東伯、中西伯の12州で電力供給に支障をきたした。
下半期の広域停電は、9月22日(マラニョン州の変電所の変圧器が焼けて11州で停電)、10月3日(フルナスの変電所の変圧器炎上で、12州で停電)、10月26日(トカンチンス州とマラニョン州間の送電線での短絡(ショート)により11州で停電)も含め4度目。小規模のものも入れれば6度目だ。
30分で50%回復なら大した事はないと見る人もいるが、国家電力庁(Aneel)や全国電力システム運営機構(ONS)には、11〜12年の広域停電に関する報告書や議事録、供述書など、3千ページを超す書類が山積みされているのに、効果的な対策が採られていない事は、今後のエネルギー政策にも関連する懸念事項だ。
エスタード紙は、ブラジル情報庁(Abin)が02年に、コロンビアの武装組織による国境侵略の可能性と共に、電気エネルギー国家統合システムの基幹構造の欠陥が大規模停電など、国のレベルでの深刻な問題を引き起こすと警告していたとも報道。発電・送電システムの脆弱さが解決されてない事は、最近の停電頻発でも明らかだ。
鉱山動力省としては、広域停電は施設の近代化などに向けた投資や総合的な改善計画の不足が原因という見方を否定したいところだが、イトゥンビアラ発電所は1970年代の建設で、同時期に建設された他の3発電所を含む施設の老朽化などは否めない。
降水量の少ない中西伯や南東伯では火力発電を併用しても発電用の貯水ダムの水位が低下するなど、根本的なエネルギー対策の見直しが求められている上、既存設備の近代化は時間を要し、早期の取り組みが必至だ。