ニッケイ新聞 2012年12月22日付け
極月に入ると歳晩の空気が一挙に濃くなり、いきなり忙しくなってくる。和尚さんも檀家回りなどで御用繁多となり、ここから—師走の呼び方が生まれたのだそうな。奥深い雪山で難行苦行のお釈迦さまが、8日の暁闇に悟りをひらいたとされ、これを臘八会とし、禅宗では—この釈迦成道を大切にし1日から8日までを臘八接心と称して不眠不休の坐禅修道に徹する▼そして—きょう22日は、冬至の到来である。この日は一日の昼が最も短かく、東京では昼間が9時間と25分。勿論、寒風が吹き、日本海側では積雪が屋根にまで達し雪下ろしに汗をかく。今年は、日本10大ニュースのトップにもなった衆議院の選挙があり、自民圧勝、民主惨敗の報道に国民は沸き、拍手の渦が巻き起こり、この26日には安倍内閣が発足し、脱デフレと景気回復へと力強く一歩を進める▼だが—哀しみも多い。女優として初めて文化勲章に輝いた山田五十鈴さん。そして林芙美子の「放浪記」を演じて人気の高かった森光子さんも、文化勲章を受章し、テレビにも気さくに出演し茶の間の話題にもなった。山田五十鈴さんは、黒澤明監督の「蜘蛛巣城」の名演技でスクリーンに躍動し、三味線の名人であり津軽三味線の響きを観客に放ち観客席が沸騰したのも懐かしい▼あの小沢昭一さんも、お二人を追うようにして旅立たれた。映画や舞台の演技もだが、民衆芸能の研究でも知られ勲4等に叙勲され、岡山県の「かつ丼」が大好物で新幹線に乗り日帰りの贅沢?と渋くも味のある人生だったが、こうして今年も静かに去ってゆく。(遯)