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「日本は没落と苦悩に喘ぐ国となるのか—否、若者がいる」=フォーリン・プレスセンター理事長 赤阪清隆=第2回=右肩下がりの日本=経済データが示す未来

ニッケイ新聞 2013年1月5日付け

 「ミスター円」と呼ばれた元財務省財務官の榊原英輔さんも、2007年に出版された『日本は没落する』という著書の中で、「日本は今、没落へと向かいつつあるのではないかという強い危機感を感じています」と言い、翌年の「没落からの逆転」という著書でその対処策を示しました。
 果たして日本はこの人たちが言うように、「没落と苦悩に喘ぐ国」になりつつあるのでしょうか。野田総理も今年10月29日の臨時国会での所信表明演説で、日本は「アジアの片隅に浮かぶ、老いていく内向きな島国として衰退への道へと向かってしまうのか」と自問しています。
 ここで、基本的なデータを見てみましょう。
 まずは、日本の人口です。今年1月末に国立社会保障・人口問題研究所が発表したところによると、2010年に1億2千806万人だったのが、48年には1億人を割って9千913万人となり、60年には8千674万人になると推計されています。今後50年間で4千万人以上の減少が見込まれるということです。しかも、65歳以上の老年人口の割合は、10年の23%から60年には40%へと増加すると見込まれています。
 今年4月、経団連21世紀政策研究所が発表した50年のシミュレーションを見ると、日本の人口は10年には中国、インド、米国などに続いて世界で9番目の位置にありました。それが、50年にはメキシコ、フィリピン、ベトナム、エチオピア、エジプトに追い越されて、世界第14位にまで下がります。
 日本の国民総生産(GDP)の成長率は30年以降マイナスが続き、50年時点における楽観的シナリオでは、中国、米、インドに続いて4位ですが、中国、米の約4分の1の規模にとどまります。
 他方、悲観的なシナリオですと、日本は中国、米、インドのほか、ブラジル、ロシア、イギリス、ドイツ、フランスにも抜かれて世界9位で、インドネシアと大差ないぐらいになります。
 ゴールドマン・サックスによると、現在のG7メンバーのうち、50年時点で経済規模が世界の上位7カ国に入るのはアメリカのみで、あとは中国、インド、ブラジル、ロシア、インドネシア、メキシコであろうと予測しています。
 今年11月9日に発表されたOECD(経済開発協力機構)のレポートでも、世界のGDP(購買力平価ベース)に占める日本の割合は、60年には10年の7%から3%まで下がると予測しています。60年時点で中国の割合は28%でトップ、2位がインドの18%、3位米国の16%となっています。
 一人当たりGDPは、経団連の楽観的シナリオでは世界20位から18位に上昇しますが、韓国は14位で日本を追い越すと見込まれます。英国のエコノミスト誌が50年の世界を予測する本を今年夏に出しましたが、それによると、50年の一人あたりGDPは、米国を100とすると韓国は107、日本は58.3になると予測しています。50年の中国は、52.3ですから、日本と大差ないレベルまで上昇します(いずれも購買力平価ベース)。

国連から見た日本=世界で希薄な存在感

 国連から見た日本というのも、最近10年位の間にずいぶんと小さくなりました。まず過去10数年間にわたり、政府開発援助(ODA)は5割以上も削減されてきました。1997年度のODA予算は約1兆2千億円でしたが、2012年度は5千612億円です。
 日本のODA実績は、00年までの約10年間は世界第1位を誇っていましたが、その後は米、英国、フランス、ドイツに抜かれて、今や世界第5位の座まで落ちました。
 次に、日本の国連予算への分担率は、ピーク時の00年には20.573%にまで達していましたが、その後の世界経済に占める日本経済の割合の低下に伴いどんどん下がり、10年からは12.530%となりました。
 今年の分担率の見直しの際にはさらに下がって、11%を切るでしょう。ここまで来ると負担が減り続けることを喜んでおられません。それは必ず日本の影響力の低下につながるからです。
 国連に働く日本人職員数も、圧倒的に少ない状況が続いています。10年末の国連統計によれば、国連事務局、ユニセフや国連環境計画などのファンズ&プログラム、それにWHOなどの専門機関を合わせて国連全体の専門職員数約3万人中、日本人は786人、すなわち全体の2.6%でしかありませんでした。国連事務局だけに限った場合は、11年7月末現在、専門職員1万2千人中日本人は214人で、たったの1.7%です。
 国際機関のヘッドや国連幹部の数でも、日本の現状は嘆かわしいかぎりです。1990年代中ごろにはWHO(世界保健機構)事務局長に中嶋宏、UNHCR(国連難民高等弁務官)に緒方貞子、国連本部の事務次長に明石康の3氏を擁して、日本人の顔が国際場裏で目立った時期がありました。
 しかし、ユネスコの松浦事務局長が2009年に退任したあと2年余りの間、国連の専門機関や基金などの国連ファミリーのヘッドに日本人は誰もいなくなり、ようやく12年に国際海事機関(IMO)のトップに関水康司さんが就任しました。ファンド&プログラムの長はゼロのままです。
 世界の15カ所で展開されている、国連の平和維持活動を率いる国連事務総長特別代表、特定地域や国のための20数人の事務総長代表ないしは特使、さらには個別問題のための約30人の事務総長の特別顧問の中に、目下日本人は一人もいません。(つづく)