ニッケイ新聞 2013年1月5日付け
年末の休暇のため安倍内閣の発足を報道できなかったが、首相の安倍晋三氏は憲法改正や集団的自衛権を認めるなどの保守派であり、原発についても民主党とは異なり、安全性などを確認した上での新設にも意欲を燃やしている。兎に角—この安倍内閣はワンマン宰相の吉田茂氏に次ぎ2回目の政権であり、戦後の政界では極めて珍しい▼それに加えて元自民党総裁の麻生太郎氏と谷垣禎一氏を閣僚に起用するという破天荒極まる人事に永田町と熊さん、八っつあんもびっくり仰天したものである。盟友の麻生元首相を副総理兼財務、金融相にし、脱デフレと日銀との話し合いで金融政策の緩和に取り組む意向を強めたのも大きい。ぎくしゃくしだした日米関係の修復もだが、東南アジアの国々との外交にも力を入れる▼麻生副総理が3日にミャンマーを訪問しセイン大統領と会談し、500億円の円借款を供与するとし、5千億円に及ぶ延滞債権についても今月中に解消すると約束するなど華々しい外交を展開しているのは頼もしい。勿論、空母建造などの軍備増強に懸命な中国の脅威と北朝鮮のミサイル発射の危険性をも視野に入れ、インドとの緊密な結びつきも大切であり、これまでの東南アジア政策とはかなりニュアンスが異なってくると見たい▼行革担当の稲田朋美さんは保守派の論客であり舌鋒は鋭い。政治評論家の評判も高く、次期首相にと推薦する人々は多い。と、賑やかな閣僚が顔を揃えているし、普天間基地の移転や尖閣諸島の領有についても大きな進展をと安倍内閣に期待するところは大きい。(遯)