ニッケイ新聞 2013年1月8日付け
さらに、最近日本の若者が海外に出たがらなくなったと言われます。海外への日本人留学生の数は、04年の8万3千人をピークに、その後年々減少しています(09年は約6万人)。
特にアメリカへの日本人留学生の数が急速に減っています。1995年頃のアメリカでは、日本の留学生数は4万人を大きく超えて世界最大の留学生数を誇っていましたが、近年は中国、インド、韓国などに次々と抜き去られました。
10年から11年の米国への留学生数は、中国が15万8千人でトップです。前年比23%の伸びです。2位がインドで10万4千人。3位が韓国の7万3千人。その後はカナダ、台湾、サウジアラビアと続いて、日本は7位。前年度比14%減で、2万1千人でした。日本は最近ずっと減少を続けています。
日本駐在の外国メデイアの数も、1997年の295社から、2012年の202社へとずいぶん減少しました。他方、中国では04年の210社から、11年の356社へと大きく増加しています。
この結果、日本から海外に流れるニュースよりも、中国から流れるニュースの数の方が上回るようになりました。報道によれば、11月8日に開幕した中国共産党大会には、5年前に比べて50%増の1704人の外国メデイアの記者が取材申請したといいます。
このようにたくさんのデータが、今後数十年間日本の国力は、右肩下がりの様相を示すと予測しています。他方、隣国の中国や韓国の将来は、日本よりもずっと明るい展望が示されています。
さらに止めを刺すように、日本の最近の世論の動きも相当内向きです。テレビやマスコミの動きを見ていますと、世界の動きへの関心度が日本では明らかに低くなっています。
テレビ番組の多くがクイズ番組か料理番組ですね。もちろん中国、韓国、ロシアとの領土問題や北朝鮮の拉致問題などには大きな関心が寄せられてきました。これらは直接日本に利害関係が及ぶものです。しかし、シリア紛争、中東情勢、イランの核開発問題、南スーダン、コンゴでの女性への暴力といった世界の大問題への関心度は決して高いとは思えません。
今から100年近く前に、近衛文麿が第1次世界大戦後のパリ講和会議に、日本代表団の一員として参加して、その感想を「戦後欧米見聞録」に載せています。彼は、「わが国民は、自国に直接利害関係ある場合には非常な熱心を持って騒ぎ立てるが、東洋以外のこととなると、我関せずの態度を取る傾き無しとせず」と言っています。100年たっても我々日本人の性向は変わっていないということでしょうか。
大国の条件には、自国以外の問題にどれほど関心を持つかということが入ると思います。その意味では、確かにアメリカ、イギリス、フランスはさすが大国と思わせるところがあります。
これらの国のテレビやインテリ向けの新聞、雑誌などを見ると、中東問題やアフリカの紛争などについてそれなりの関心を示しています。日本で一番読まれている雑誌は「文藝春秋」でしょうが、タイム、エコノミスト、レクスプレスなどと比べると、この違いが明白です。(つづく)