ニッケイ新聞 2013年1月10日付け
ある企業家が「いやあようやくね…」と清清しいで表情で話し出した。日本から来た人が1千万円を福祉団体に。それを見たのをきっかけに自身も「何か社会のために」と毎年続けてきた寄付が今年20年目を迎えるのだという。経営的に厳しいときもあったろうが、踏ん張ってきた自負がにじみ出ていた▼金額の多寡を問わず、寄付を行なっている人は多い。ご主人を亡くしたばかりの未亡人に「長年のご協力ありがとうございました」との電話が福祉団体から。聞けば数十年間、毎月50レを寄付してきたのだという。全く知らなかったと驚いたが「主人の遺志を継いで同額の寄付を続けることにしました」▼なくなってきたと言われる相互扶助の精神だが、福祉団体はそれなくしては成り立たない。本紙12月15日付け6面、匿名の投稿「日系福祉団体のありかたを問う」は、各団体の寄付を受けるさいの対応に苦言を呈している。マニュアルなどなく、受付の人次第。要は、有益に使ってもらえればいいのだが、そこは人間。「同じ寄付するなら気持ちよく」と愚痴りたくなるのも分かる。投稿は「感謝の気持ちを忘れず、原点に」と締めくくる▼「こどものその」の谷口ジョゼー理事長ら幹部が9日に本紙編集部を訪れ、対応のまずさを素直に認め、改善を約束した。文書に認めたものは、11日付け本紙6面に全文掲載する。投稿で指摘があったのは4団体。寄稿者が怒りの余り、一度出した小切手を引き下げた団体の幹部は読んだだろうか。二、三世で、日本語が読めないのかもしれない。身近な一世の方がそっと伝えるのも気持ちの寄付では。(剛)