ニッケイ新聞 2013年1月15日付け
ブラジルに対する諸外国からの投資が減少し、ロシアやメキシコ、トルコなどの他の新興国に向けられつつあると、14日付伯字紙が報じている。
国際的な投資の動向を研究するコンサルタント企業のEPFR・グローバル社の発表によると、新興国でもっとも国外投資を受けているのは中国で、ブラジルは2位、以下、インド、ロシア、南アフリカ共和国、トルコ、インドネシアと続く。ブラジルは2位にこそつけたものの、新興国内でのシェアは大きく落ち、2009年12月に16・7%あったところが12年11月には11・61%に下がった。
さらに、全世界の国を対象にした場合、2012年初頭は2%以上だったブラジルのシェアは年末には1・2%に急降下。ラ米諸国間でも、一時は65%以上を保っていたのに、12年末には56・65%まで下がった。
ブラジルに対する投資を大幅に減らした大手投資会社はブラック・ロック社とパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)社。ブラック・ロック社を2011年7月と12年同月で見た場合、ラテン・アメリカ・ファンドに占めるブラジルへの投資比率が70・6%から64・2%に、新興市場ファンドも20・3%から12・8%に下がった。PIMCO社では7年12月に20・6%あった新興国地域ファンドが12年6月には7・3%に激減、戦略ファンドも9年12月の5・8%が12年9月は2・9%に落ちた。フィデリティ・アドバイザー社の新興市場ファンドも、12年1月の16・1%が12年7月は8・6%に落ちている。
ブラジルへの投資が減った背景には、2010年のIOFの2%から6%への引き上げや、経済基本金利(Selic)の引き下げなどがある。基本金利が高くなるまでは、メキシコやトルコ、ロシア、タイなどのほかの新興国に投資して様子を見ようとしている証券会社もある。PIMCO社のマイケル・ゴメス理事は「ブラジルは投資家にとって魅力的な国だが、金融取引税(IOF)の引き上げと、経済政策の不明確さが長期投資を難しくしている」と指摘する。
ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)の経済学者のネルソン・マルコーニ氏は「IOFの引き上げは固定金利での長期投資を困難にしてドル安レアル高を抑制し、為替の安定を招いたが、エネルギー部門への政府の介入は株式投資を遠ざけた」としている。
ブラック・ロック社の新興国対策チームのルイス・ソアレス室長は「ブラジル政府の介入後にブラジルエネルギー部門の株が売られたため、投資比率が下がった」と語っている。