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「日本は没落と苦悩に喘ぐ国となるのか—否、若者がいる」=フォーリン・プレスセンター理事長 赤阪清隆=最終回=国際化し日本に活力を=若者をグローバル人材に

ニッケイ新聞 2013年1月15日付け

 日本ではこれまでにも、役所や企業などのどの組織にも、国内派と国際派がありました。そして、関係者との根回しや泥臭い付き合いなどに強い国内派の人たちが、組織の中で重要なポストにつく傾向がありました。しかし、これからの時代は国民全員、特に若い人たちが、否が応でも国際派にならなくてはいけません。
 日本企業のこれからのビジネス展開を考えた場合、これからますますグローバルな人材を必要としていることは明白です。成長の中心であるアジア諸国を始めとして、日本企業の海外シフトはますます加速するでしょう。企業で求められているのは、海外事業展開を担えるグローバル人材です。現地社員を上手にマネイジでき、ITからマーケテイングなどの専門知識と英語力が不可欠です。
 日本はこれから人口、労働者数、経済力、製造業、資本投資など、どの分野をとっても右肩下がりです。今若い人たちが「居心地の良い日本」に満足しているとしたら、その状態は長くは続かないでしょう。若い人たちが元気を出して、海外にも雄飛し、日本の活力を呼び戻してくれなければ、日本は本当に「没落と苦悩に喘ぐ国」になるかもしれません。
 グローバル人材に必要なのは、まず語学です。英語の能力について言えば、日本は2010年のTOEFLスコアのランキングで163カ国中135位でした。アジアの中では、30カ国中27位で、韓国、中国、アフガニスタン、モンゴル、ベトナムなどの後塵を拝しています。これは何とかしなくてはいけません。
 皆さん、外国語は1カ月や1年間でマスターできるものではありません。一生かけてやるものです。そう観念して、こつこつと努力してください。それしかいい方法はありません。
 私は、日本の若者がグローバル人材への我々の期待に応えてくれると信じます。政府や企業もそのための環境整備を整えようとしています。これまで懸念の強かった、海外に留学した後の就職についても、最近の傾向としてはかなり改善を見ていると思われます。
 例えば株式会社デイスコの採用活動に関する12年2月の企業調査では、グローバル人材としての日本人留学生への関心が高まっており、特に1千人以上の大手企業では、3社に1社以上が留学生を採用すると答えています。このように障害が取り除かれれば、海外留学生数も増えるでしょう。

若者よ、海外へ出よ=世界水準を身に付け活躍

 一昨年ノーベル化学賞を受賞された根岸栄一教授は、新聞記者やテレビでのインタビューで「日本の若者よ、海外に出よ」とおっしゃっていましたね。「日本は居心地がよいし、海外のほうが優秀とは限らない。しかし日本を外から見る機会がこれからますます重要になる」と。
 海外で学んだり仕事をしたりして、何が役に立つかというと、それは一にも二にも自分に自信がつくことです。自分を世界の水準で計ってみることが出来るようになります。それから、外国人を「外人」と思わなくなることです。
 世界中の人たちも、自分の同僚や友人、あるいは自分と変わらない人たちだということが肌で感じられるようになります。これは経験してみないと分かりません。
 スポーツの世界や音楽、美術、映画、ファッション、アニメ、小説、料理など、実力を試す分野でもどんどん世界が小さくなっています。是非とも若い皆さんには、世界水準で物事を考え、競争し、行動していただきたいと思います。
 世界は広く、自分の可能性を試す機会が山とあり、元気のある日本の若者を待っているところが世界中に一杯あります。大学や研究機関、国際機関、特に国連がまさにそうです。NGOやボランテイア活動などもそうです。
 日本人は真面目で責任感が強く、しかもチームワークを大事にしますから、どこでも高い評価を得ています。特に国連では日本人職員数が少なすぎて、もっと増やそうとしているところです。国際機関のスタッフとなった人たちから、将来トップのポストを狙ってもらおうではないですか。
 世界中で日本人がリーダーとして活躍することで、日本へのイメージも変わるでしょう。日本の国際的な影響力も増すでしょう。日本人の良いところも見直されるはずです。そうすれば、もう誰も「日本没落」などとは言わなくなるでしょう。ロムニーさん、あなた間違っていましたよ、と見返してやってください。
 日本がいろんな分野で活気を持ち、世界の国々から尊敬されて、国の勢いを取り戻すようになるためには、皆さんのような若い人たちが世界に打って出て、世界水準で考え、世界で活躍されることが不可欠です。内にこもることなく、自信を持って世界を相手に大きく羽ばたいてください。
 皆さんのこれからの活躍を期待して、私の拙い話を終えたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(終り)