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サンパウロ州麻薬問題=常習者の強制入院はじまる=初日は62歳男性が入院=説明のみで不満の肉親も

ニッケイ新聞 2013年1月23日付け

 21日からサンパウロ州が、重度の麻薬常習者の強制入院制度適用をはじめた。初日の21日は、入院者は出たが、路上生活で重度常習者の強制入院はなかった。また、受診施設の対応をめぐり一部で混乱を招いた。22日付伯字紙が報じている。
 麻薬常習者への対応は州の飲酒喫煙麻薬対策センター(CRATOD)と、市の社会精神対応センター(CAPS)で行われる。CRATODには、医師のほか、判事や検察官、ブラジル弁護士会(OAB)の弁護士も9〜13時の間待機し、連れて来られた患者が医師の入院の薦めを拒絶した場合に入院させるか否かの法的判断も行う。
 施設に来る常習者は、「自発的にまたは社会福祉士らに説得されて来る人」「肉親が同伴または肉親の要請などで派遣された係員に半強制的に連れて来られた人」「死の危険性があり、救助隊が路上から病院に搬送した後に連れて来られた人」の3通りがある。一つ目は法的手続きが不要で、入院も含めた対応は医師の判断で決まる。二つ目の場合は医師の診断と並行して検察へ報告され、入院などの対応が検討される。三つ目の場合は医師が即刻入院を要請、判事と検察と弁護士が入院か否かの判断を行う。
 21日は、娘(34)の願いで連れて来られた62歳男性が入院となった。「麻薬を使いはじめてもう10年で、2度自主入院したのに効果がない。父には死んで欲しくない」という娘は、精神安定剤をジュースに混ぜて飲ませた後、救助隊の手に父を託した。また、父親に噛み付き、偽の銃で強盗を働いてやると脅した10代少女も検察の判断待ちとなっている。
 その他、常習者2人が自発的に入院の申し出を行い、他の2人が治療の際に逃げ出した。
 州政府は本人の命が危険な場合や周囲の人に危害を及ぼすような常習者を入院させる意向だったが、子供を入院させるつもりで来た親が多く、混乱も生じた。すぐ入院させることが出来ると思って来たのに、医師から説明を受け、CAPSなどを探すよう指示されただけの親は、具体的な処置を何も受けないまま返されたと不満を抱いた。
 21日は路上から連れて来られた重度の常習者の強制入院はなかった。強制入院の適用には、昨年1月のクラコランジア取締りのような軍警の投入は行われていない。
 州保健局の飲酒喫煙麻薬担当のロザンジェラ・エリアスさんは「クラコランジアには2千人も常習者がいるのに入院が20〜30件というのは少なすぎると思うでしょ。強制入院は例外中の例外で、問題解決にはならない。本当は生活している場で治療するのが最善なの」と語っている。