ニッケイ新聞 2013年1月25日付け
ジウマ大統領が23日夜、24日から一般家庭用の電力料金は18%、産業用は最大32%値下げすると発表したと24日付伯字紙が報じた。9月に料金を平均20%値下げと発表以来、否定的な意見を述べていた人は心配性の悲観主義との批判の言葉も飛び出した。
9月の電気料金値下げ発表時は、家庭用16・2%、産業用28%とされていた値下げ幅をより大きくし、実施期日も2月5日からを前倒しという発表は、テレビとラジオを通して行われた。
側近はこの発表を「否定的な評価を口にする人々を黙らせるため」と評価。政府は約束を守ると強調しての発表は、水力発電所のダム水位の低下で火力発電所が稼動しているから電力料金の下げ幅は小さくなる、2001年のような節電が必要になる、2014年のサッカーW杯のような大型行事の時は広域停電が起こる、などの声を黙らせるためのものだ。
大統領によれば、これらの批判はみな、心配性の人間が導き出した悲観的な展望に過ぎない。それどころか、9月に出した値下げ幅は今から見れば保守主義で現状維持的な考えに裏打ちされており、もっと前向きな取り組みが必要だという。
テレビでの発表の様子はあたかも再選を目指す候補者そのもの。基幹構造(インフラ)や教育、保健への投資を拡大してきた、今年は発電量を8500メガワット、送電線網も75万4千キロ拡大する、水力発電以外にも原子力、火力、風力といった発電所がある、火力発電所の稼動は例年の事などを強調した。
現行のエネルギー政策と投資は万全で、電力不足は起こりえず、国庫への負担も増えないという大統領だが、実際には、教育や保健への投資は2010年比25%増えてもインフラへの投資は22%減。発電量や送電線網の拡大は計画よりかなり遅れており、リオ・グランデ・ノルテとバイア両州には完成しても送電線が引かれていないために操業出来ない風力発電所が26カ所もある、ダム貯水量は例年以下で、雨が降り始めても火力発電所はフル稼働のままなど、大統領発言に反するデータは数多い。
また、24日付G1サイトは、電力料金を発表通り値下げする事で生じる国庫負担は84億レアルとの国家電力庁の試算結果を報道。国庫に負担はかからないとの大統領発言は、政府機関そのものから否定された。
23日付フォーリャ紙には、料金値下げに向けて改定、更新された契約では電力公社が火力発電所から電気を買い取る資金の備蓄がなくなり、水力発電所の発電量が落ちた時のコスト増は消費者負担になると書かれている。大統領は、電力料金値下げは契約更新を拒んだ電力公社のあるサンパウロ州やミナス州でも一律に行うとも発表。産業界は大歓迎の料金値下げが消費者の懐を本当に潤すか、インフレ抑制や14年選挙のための得点稼ぎに終わるか、財政収支の帳尻合わせが続くかなどを観察する必要もありそうだ。