ニッケイ新聞 2013年1月25日付け
サンパウロ市南部イピランガにあるルーラ前大統領の研究所ビルに23日、学生や土地なし農民の一団が侵入した。24日付伯字紙が報じている。
同事件はサンパウロ州カンピーナス地方アメリカーナの定住地ミルトン・サントスの農家68家族への立退き命令に反対するもので、一行は24日まで居座りを継続。農民の一部はパウリスタ大通りにある大統領府サンパウロ市出張所があるビルの前でも抗議活動を行った。
侵入者の一人が「我々はルーラ氏を攻撃しに来たのではない、ジウマ大統領と共に問題解決に力を貸して欲しいんだ」と語るように、一行はルーラ氏の介添えを求めている。ミルトン・サントスはルーラ政権時代の05年に国立社会保険院(INSS)から国立植民農地改革院(Incra)に委譲が決まり、土地なし農民が定住をはじめたが、12年の裁判で私有地と判断され、農民に立退きが命じられた。
一行は「選挙前までのルーラ氏は土地なし農民の問題に関心を持っていたはずだ」というが、この事件は、ルーラ氏が現政府に干渉しているとの批判が表出しているさなかに起こっている。
ルイス・ドゥルシ同研究所理事によると、ルーラ氏は朝のうちにペペ・ヴァルガス農業開発相に連絡を入れており、ヴァルガス氏は同日午後、Incraのカルロス・ゲデス院長にサンパウロ市へ行って問題を処理するよう命じた。ゲデス院長は24日にサンパウロ州ピラシカバにある連邦裁判所に行き、2月4日が期限とされているミルトン・サントスの農家の立退き延期を要請した。農民たちは同院長との会合後、24日午後、研究所から退出した。
労働者党(PT)や中央労組(CUT)との結びつきが強い土地なし農民運動(MST)は、侵入事件には無関係との声明を出した。ルーラ氏は同事件に「不愉快だ」と語っており、この日の予定も変更。研究所には姿を現さなかった。