ニッケイ新聞 2013年1月29日付け
無力感が全身を襲った—。27日に南大河州サンタマリアで起きた大火災に関するニュースが間断なく流れる中、何も出来ず、TVの前で聞き入るしかなかったコラム子の実感だ▼会議でチリに居たジウマ大統領は会議をキャンセルして現場に飛び、州知事の脇で涙をぬぐい、翌日の新聞は1面の大部分が火災の写真や記事で埋まり、エスタード紙は日常の出来事を扱うメトロポレも火災関連記事だけという突出ぶり▼ブラジルの火災では過去2番目、ナイトクラブでの火災では世界で4番目となる231人の死者という事件は世界中を驚かせたが、連邦大学や空軍基地もあり同州の〃心臓〃といわれる町での火災はあっという間の出来事。出口脇のトイレの扉を出口と見誤って逃げ込んで死んだ人が180人、生存者を探す消防隊の周りでは携帯電話が一斉に鳴っていたとも▼日本には〃親より先に死ぬ子は親不孝〃という表現があるが、火災と知って息子や娘に電話をしても繋がらず、やっと出た相手から子供の死を告げられた遺族も多い。子供の帰りが遅いだけで気を揉んで眠れなくなるのが当たり前の親には、遺体の確認や埋葬と続く悲劇がどれ程の心痛である事か▼リオでは大学に合格した女子青年が麻薬組織掃討作戦の流れ弾で死ぬ事件があった直後だが、今回の犠牲者の多くは連邦大学新入生ら。将来を担う人材を失った痛みも大きい。服喪宣言で同州のサッカーの試合は全面中止。他州の試合前やチリの国際会議閉会時でも1分間の黙祷が捧げられた▼28日からは埋葬も始まる中、遺族や生存者に生きる力が与えられる事と再発防止を切望せずには居られない。(み)