ニッケイ新聞 2013年1月30日付け
日本の独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の北里洋理学博士など関係者ら5人が22日に来社し、4月から約2カ月間の日程でサンパウロ州立総合大学(USP)海洋研究所とブラジル地質研究所(CPRM)との共同で、日本が誇る「しんかい6500」によるブラジル沖深海調査を行うことを報告した。世界2番目の潜行能力を持つ日本唯一の大深度有人潜水調査船だ。北里博士は「この海域はほぼ調査が行われていない処女地」と新たな発見に期待を寄せている。
今回来伯したのは、北里博士、藤倉克則深海生態系研究チームリーダー、研究支援部の中山敦志調査役、事業推進部の舩窪舞、磯野哲郎さんの5人。両国政府間が結ぶ日伯科学技術協力協定に基づき約3年前から打ち合わせを進めてきた。
「しんかい6500」による世界一周研究航海『QUELLE2013』の一環として実施されるもので、ブラジル近海の調査は4月上旬から5月下旬までの約2カ月間の日程で行われる。
調査地点としては、海底からの高さが5千mを超える巨大な海山を持つリオ・グランデ海膨、メタンや硫化水素などの本来有害な物質をエネルギーとする生物の生息が見込まれるサンパウロ海領とサンパウロ海台の3カ所。深海の生態や地質の調査が行われる。
調査後、5月26日にサントス港に入港し、同29日の午前にはサンパウロ州立総合大学建築学科の校舎にて同開発機構とUSPの研究者による講演、午後からは日本人学校で調査の概要などに関する説明が行われる。
藤倉氏によれば「ブラジル近海は南北両側から大きな海流がぶつかる海域であり、海底でガスが噴出しているようなところもある。見たこともない生物がいるかも。非常に楽しみです」と期待を寄せる。
北里博士も「近年石油の発掘などで注目を集めている海域だが、まだまだ学術的な面での調査は行われておらず、まさに処女地と言える。どこに潜っても全てが新しい」と興奮した面持ちで話した。一行はブラジル側との打ち合わせのため20日に来伯、23日に帰国した。