ニッケイ新聞 2013年2月5日付け
4日に行われた下院議長選挙で、エンリケ・アウヴェス下院議員(民主運動党・PMDB)が選出された。同氏は1日に上院議長に選ばれたレナン・カリェイロス氏同様に数々の汚職疑惑を抱えながらの当選となった。4日付伯字紙、伯字紙サイトが伝えている。
下院議長選挙は、アウヴェス氏と、同じくPMDBのロゼ・デ・フレイタ下議、ジュリオ・デルガド下議(ブラジル社会党・PSB)、シコ・アレンカール下議(社会自由党・PSOL)の間で行われた。
投票は下院議員497人によって行われ、271票を獲得したアウヴェス氏が当選。次点はデルガド氏の165票で、以下ロゼ氏47票、アレンカール氏11票、白票3票だった。
これで、上院、下院共に汚職疑惑に揺れる人物が議長に選出されたことになる。新上院議長のレナン氏は、2007年に個人支出をロビー活動家に払わせた疑いなどで検察から起訴されたが、アウヴェス氏も1月から疑惑が噴出していた。1月13日には、同氏が北大河州内の市の事業と称して連邦政府に議員割り当て金を支出させ、そこで支給された資金を側近の経営する会社に横流していた疑惑が発覚した。
これ以降も、レナン氏と共謀する形で、元連邦道路警察理事の再就職のためのロビー活動や、議会の支持取り付けの見返りに軍政時代の恩赦の申請待ちの順番を不正操作した疑惑などが持たれている。
こうした理由でか、今回の下院議長選挙では反アウヴェス派の動きが目立った。上院議長選挙でレナン氏への投票を拒否した与党のPSBはデルガド氏を立てて反抗したが、今回はPMDB内部でも票が割れた。PMDBは3日、新たな下院リーダーとしてエドゥアルド・クーニャ氏を選出したが、同氏のグループはロゼ氏に投票した。
アウヴェス氏は64歳だが、議員生活42年を数えるブラジルきっての古株議員。下院議員だった父アルイジオ氏が国家革新同盟(ARENA)のライバルに追われて下院を去り、PMDBの前進のブラジル民主運動(MDB)に移籍した後、22歳の1970年にMDBから下院議員に立候補して当選。80年にはタンクレード・ネーヴェス元大統領率いた大衆党(PP)に移籍など、「民主化のために戦う政治家」の印象を植え付け、95〜01年にはPMDB下院副リーダー、96〜98年には同党副党首を歴任し、順調な政治キャリアを送っていた。
だが、02年の大統領選挙でジョゼ・セーラ候補(民主社会党・PSDB)の副候補にという話は、「1500万ドルを国外送金した」と元妻から告発された疑惑で流れた。民主化を推進したはずの議員が汚職に手を染める傾向は、メンサロン事件のジョゼ・ジルセウ氏とも共通している。
なお、アウヴェス氏が議員生活42年で自身の立案した全672法案中、法制化されたものは3件しかない。