ニッケイ新聞 2013年2月9日
日本の「うなぎ屋」の親父さんらが、悲痛な泣き声を上げている。あの万葉集の大伴家持も「夏痩せにむなぎ取りめせ」と歌い、大昔から日本人が好きな鰻が急減し、環境省が「絶滅危惧種」に指定した為に騒ぎが大きくなったらしい。江戸や平安時代の人たちをも楽しませたニホンウナギの水揚げが今は1960年代の10分の1以下に減ったの報告もあるし、これ程にウナギが足りない▼まあ、ウナギの生態については謎が多い。ギリシャのソクラテスは沈思黙考を重ね「土から生まれる」と語り、日本では「山芋変じてウナギと化す」と信じられてきた。このニホンウナギ誕生については、東京大学の塚本教授が、日本から南に2千キロのマリアナ諸島沖でウナギの卵を採取して産卵海域とし解決したけれども、卵から養殖する技術にはまだまだ遠い▼さて、このウナギ不足だが、河川の汚染と乱獲が原因とされているが、これは欧州でも同じであり、養殖に欠かせない稚魚のシラスウナギの漁獲を6割削減するの規制に踏み切るなど対策に懸命だけれども、成果が上がったの報告はまだ耳にしていない。日本でも中国から「蒲焼」にしたものを輸入しているが、これがヨーロッパうなぎであり、欧州の国々が悲鳴を上げているウナギなのである▼台湾からも活鰻を輸入しており、夏の土用ともなれば、専用機で運ばれてくる。年間に2万トン超が成田空港などに着くが、これとてもシラスウナギが減ってしまっては、養殖も難しく、楽観は許されない。これでは、うなぎ屋の親父さんと同じに泣き声になるのではないかーと、いささか気になる。(遯)