ニッケイ新聞 2013年2月12日
社会運動家との対話の窓口であるジルベルト・カルヴァーリョ大統領府総務室長が8日、ジウマ政権は従来型の農地改革見直しのために定住化にブレーキをかけていると釈明したと8日付G1サイトや9日付フォーリャ紙などが報じた。
定住地に入った農民数が3政権中最低で、土地なし農民運動家(MST)から農地改革のペースが落ちたと批判を浴びているジウマ政権だが、カルヴァーリョ氏は「定住地の多くは農村のファヴェーラと化している」と現状を説明した。
現政権で定住化した農民は年平均2万2552家族で、フェルナンド・エンリッケ・カルドーゾ(FHC)政権の6万7588家族やルーラ政権の7万6761家族の約3分の1だ。政権初年度の定住家族数は、FHC10万5千、ルーラ政権11万7500に対し、現政権は2万2021。昨年も2万3083家族の微増に止まった。
FHC政権とルーラ政権では過去20年間で最大規模の農地買取と定住化が行われてきたのに、現政権ではなぜ従来同様のペースで農地改革を行わないのかという声は現政権初年の2011年から出ており、1月23、24日に起きたサンパウロ市南部のルーラ研究所占拠事件も定住地を巡る問題解決を求めたものだった。
一方、選挙公約に極貧撲滅を掲げたジウマ大統領が、パラナ州北部のアラポンガス定住地を訪問し、MSTのメンバーに〃偉大な農業生産者達〃と挨拶した上で、農業産品加工などの農工業化に3億4200万レアルを投入すると発表したのは4日。従来型の農地改革は農村部にファヴェーラを形成したとの発言はその4日後になされた。
総務室長は、現政権は定住地の面積や定住家族数を増やす事以上に、生活の質や生産性の向上を目指しているという。
国立植民農地改革院(Incra)も、定住地では上下水道や電気さえ整ってない所が多いため、昨年からは、持ち家政策の〃ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ〃や全戸給水計画の〃アグア・パラ・トードス〃などのプログラムと抱き合わせる形の政策変更を実施中と説明している。
ジウマ大統領が4日に訪問したアラポンガス定住地は〃テーラ・フォルテ〃と呼ばれる農工業化計画の典型例で、牛乳加工工場建設に1110万レアルを投入。農産物の現地加工で、雇用や所得の増加、生活の質向上をもたらす計画だ。
社会運動家の取り込みは2014年の大統領選前の必須事項としてルーラ前大統領が命じた事柄の一つで、MSTへの対応と並行し、ミーニャ・カーザ・ミーニャ・ヴィダの対象となる市を増やす、人口10万人以上の町の路上生活者対策推進などが発表されている。