ニッケイ新聞 2013年2月14日
ルーラ前大統領と会合を持ったジウマ大統領が、2014年の大統領選挙のために、新しい政治姿勢や戦略を採り始めたと12日付エスタード紙が報じた。
ルーラ前大統領時代の労働者党(PT)政権の特徴は土地なし農民運動(MST)や労組などの社会運動とのつながりの強さだが、その特徴が目立たないジウマ大統領に前大統領が直接的な助言をしたのは2012年末のパリと1月25日のサンパウロ市での会見の2回だ。
2014年の大統領選候補はジウマと公言した後に政界の親的存在である前大統領が様々な提言をするのは当然で、その効果は、1月に始まった北東伯訪問や、今月11日のパラナ州アラポンガス定住地訪問時にMSTの活動家を〃偉大な農業生産者達〃と褒め上げた事に具体的に現れた。
1月18日にピアウイ州を訪問した時は、前大統領同様、皮の帽子や上着を着て写真に納まり、2月4日にはMSTが関係するアラポンガス定住地を訪問。同5日は中央労組(CUT)関係者と会談し、3月6日にブラジリアで行われる労組のデモ行進時も関係者と会う約束をしたという。
ジウマ大統領は社会運動家との会合はジウベルト・カルヴァーリョ大統領府総務室長に一任してきたため、3月6日の会談が実現すればジウマ大統領と労組との初の正式会合となるという。
PTが本来の地盤としてきたMSTやCUTとの接触は、票田である北東伯訪問と軌を一にするものだ。ジウマ大統領は企業家との接触も積極的に行っており、大統領官邸での企業家との会合は今年だけで10回を超えている。
前大統領との会合後の変化は政局運営への積極的関与としても現れ、政権初年の〃ファッシーナ〃で辞任閣僚が出た共和党(PR)や民主労働党(PDT)といった政党に閣僚職を再提供するなどの動きもあった。
一方、極貧撲滅が選挙公約だった大統領が、登録済みの極貧者は3月中に撲滅と発言したのは4日。ボウサ・ファミリアや12年半ばに導入した〃ブラジル・カリニョーゾ〃と呼ばれる生活扶助を申請したが、今も1カ月の収入が1人当たり70レアル以下の60万世帯は、3月中に1人当たり70レアル超の月収になるというのだ。2003年にボウサ・ファミリアが導入された時の極貧家庭は850万世帯と報告されている。
ただし、月収345レアルだった5人家族が、ブラジル・カリニョーゾの10レアルを受け取って355レアルの月収となったから極貧脱却といわれても、1人2レアルの増額分はインフレなどに食われるのが実情。現政権の支出の半分は最低賃金引上げその他の社会福祉関係諸費というが、政府支援による数字上の極貧撲滅ではなく、教育や雇用状況の改善による所得向上とそれに伴う極貧脱却が必要だ。