ニッケイ新聞 2013年2月20日
ブラジル日本語センター(板垣勝秀理事長)が1月23日から3日間、『第55回全伯日本語教師合同研修会』を開催し、60人の日本語教師が参加した。最終日のプログラム「ベテラン教師に聞く」では4校の校長による経営の秘訣が語られた。ドウラードス日本語モデル校の城田志津子校長(南麻州)、ブラジリア日本語モデル校の三分一貴美子校長、越知日伯学園の越知恭子校長(パラー州ベレン)、クリチーバ日本語学校の大山多恵子校長(パラナ州)が、聞き手をひきつける巧みな話術で1時間半にわたりノウハウを披露、参加者は熱心に聞き入った。
初めに講演を行ったのはドウラードスモデル校の城田校長。1989年の設立時、1年分の運営費は確保済みで、生徒も200人以上と華々しいスタートを切ったが、まもなくデカセギブームによる生徒激減の苦境に立たされ「1年で何十人も抜け、経営の難しさを知った」と振り返る。
運営母体の南麻州日伯文化連合会でも、日語学校を経営する支部は半分以下の4校に減少。自らが教鞭を振るう共栄移住地の分校も岐路に立たされたが、「閉校したら終わり。一人でも生徒がいれば続けよう」と諦めず経営を続けるうち、むしろ少人数制の行き届いた教育が評判を呼び、他地域からも生徒が集まるようになったという。
モデル校で取り入れた和太鼓導入も、生徒数減少を食い止める対策として功を奏した。「当時、まだ珍しくて、あちこちのイベントに呼ばれた。生徒も友達と旅行気分で出かけられるので喜んで参加した」と説明する。
台詞の暗記で自然と日本語が身に付く劇なども「遊びながら学べる」ので効果的だという。
YOSAKOIソーラン、笛や習字等を通した情操教育にも力を入れ、生徒数は多い時で約90人にまで回復した。
現在、同校は南麻州の中心的存在として教師会活動を推進しており、城田校長は「生徒が減った時こそ、諦めず一緒に考えれば本当の英知が沸くもの」と締めくくった。
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ブラジリア日本語モデル校の三分一校長は、「組織だって動けば確実に信用される」と「組織」の大切さを強調した。同校では教師会を定期的に開催し、「決めたことをきちんと守り、話し合いのもとに事を進める」を徹底している。ルールが破られた場合はおろそかにせず原因を究明し、再び共通理解を図るという。
同校の運営母体は1989年に創立したブラジリア日本語普及協会で、「教師育成研修会」「日本文化普及」「同校の運営」を3本の柱に掲げている。会員校は6校ある。
120人の生徒のうち日系人は2割のみで、しかも家庭内での日本語話者はゼロ。地域特性により裕福な知識階級が多いため、ポ語でしっかりと説明できるバイリンガル教師が求められている。
昨年、試験がなく生徒の関心に応じてカリキュラムが組まれる「カルチャークラス」を開講して門戸を広げたところ大好評。「今年は3クラス増えそう」と生徒数は増加傾向だという。(つづく、児島阿佐美記者)