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死と生の瀬戸際で=UTIから生還の患者証言=検察が女医を殺人罪で起訴

ニッケイ新聞 2013年2月23日

 【既報関連】パラナ州検察局が20日、クリチバ市にあるエヴァンジェリコ病院集中治療室(UTI)主任のヴィルジニア・ソアレス・デ・ソウザ医師を殺人罪で起訴、UTIで死亡した患者の遺体を再検証する可能性もありうると21、22日付伯字紙が報じた。
 人工呼吸器や薬品投与のための機器の停止は患者や家族の同意に基づく安楽死幇助(ほうじょ)ではなく、意図的な殺人であった可能性は、ソウザ氏が19日に逮捕された後、次々に現れた病院職員や元患者、死亡した患者らの遺族の証言から明らかになった。
 ソウザ氏に関する捜査は複数の機関で行われているが、1年かけた捜査の結果、逮捕に踏み切った市警では、ソウザ氏がUTIの主任となった2006年以降にUTIで死亡したすべての患者についてその状況を再確認すると共に、少なくとも6人の遺体を掘り起こして再検証する意向だ。
 エヴァンジェリコ病院はクリチバ第2の大手病院でもあり、ソウザ氏の逮捕は社会的な反響が大きかったが、逮捕後に報道された証言の中で生々しかったものの一つは、2012年12月に入院した患者のもの。
 体中に管を繋がれた状態だった患者は、朝8時頃、ソウザ医師が「人工呼吸器を止めたままで16時まで耐えられるか見てみよう」と言ったのを聞いた。この患者は苦しそうな様子を見た看護婦が電源を入れてくれて助かったが、家族に送った「医者が機械を止めて私を殺そうとした。ここを出なくちゃ」というメモは今も家に残っている。
 職員達からは、「(ゴミ溜めの)UTIをきれいにしたい」などという発言があった、心停止を起こした患者が統一医療保健システム(SUS)の患者だと職員は外に出され、保健プランや個人の患者だと救命処置をとるなどの告発があり、収入増に繋がる患者受け入れのためにSUSの患者切り捨ての可能性が窺われる。生命維持装置を止める事は頻繁に行われていたらしく、注射をせよとの命令を拒否した元職員が、別の人が注射したら患者が数分で死亡したと証言した例もある。
 市役所の捜査担当者は入院患者1人当たりの収入はSUSと保健プランでほぼ同じというが、エヴァンジェリコ病院は多額の負債も抱えている。
 同病院の医師達はソウザ医師は有能で医師の倫理を踏み外すような行動は見られなかったと言うが、職員達はタバコを吸いながら出勤していたとも証言。同州地方医師会では事実関係が明らかになった時点で同医師の資格剥奪などの可能性も検討し始めている。