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〃いろんな人たちの一部〃=ダウン症の主演俳優が激白=話題の映画「コレーガス」

ニッケイ新聞 2013年3月6日

 ダウン症の若者たちの日常を追った映画「コレーガス(仲間)」が1日から全国公開され、話題を呼んでいる。4日付フォーリャ紙が報じている。
 「コレーガス」は、ダウン症の若者たちがそれぞれの夢を抱きながらアルゼンチンのブエノス・アイレスへ車で旅をする間の人間模様を追った作品で、12年8月に南大河州で行われたグラマード映画祭で公開されるとたちまち話題となり、グランプリを獲得。同年10月のサンパウロ国際映画祭では最優秀ブラジル映画賞を受賞し、現在はサンパウロ市だけで39の映画館で公開されるまでになっている。
 この映画は主演俳優でサンパウロ市西部ペルジゼス在住のアリエル・ゴールデンベルグ(32)の発案で作られたもので、4日付フォーリャ紙は同氏にインタビューを行った。
 アリエルは、「自身が一般の人と違うという意識があるか」との質問にも、「それはない。僕たちは染色体が人よりも1本多いというだけで、世にいるいろんなタイプの人間の一部に過ぎない」と自信を持って答えている。
 この「コレーガス」は単にダウン症を扱っているだけでなく、これまでの映画で見られることのなかったダウン症同士の男女の恋愛も克明に描いている。この映画でのアリエルの恋人役は実生活で9年の結婚生活を送っているリタ・ポック(32)だ。アリエルはリタを「純粋な心を持った女性」と称えている。
 母親のコリーネさんについては「安心」をくれたと評し、「(母との関係では)愛情以上に〃支え〃が大切」と語った。自分を通常の子供と同じ学校に入学させた後、ダウン症の生徒のための学校にも行かせ、テレビ局と交渉して俳優としての仕事を獲得するなどして、自分を支えてくれる母親への信頼を表した。
 「この映画の成功のあとしたいこと」に「俳優としての仕事を確立すること」と答えたアリエルにはもうひとつの夢がある。それは、この映画を、アリエルの憧れの米国俳優ショーン・ペンに見てもらうことだ。それは、ペンが幼い娘の養育権獲得のために闘う知的障害者の男やもめを演じた映画「アイ・アム・サム」が、アリエルが俳優を志す契機となったからだ。アリエルは現在ネットで、ペンが来伯するための運動を起こしており、その署名は140万人にまで拡大しているという。
 アリエル自身は、ダウン症の人々へ「ルット(喪)をルッタ(戦い)に変えるんだ」のメッセージを残している。