ニッケイ新聞 2013年3月7日
セアーザを久々に訪れた。忙しい朝のピークは過ぎていたので、場内にはのんびりとした空気が漂っていた。車の荷台で寝ている人、ノッタとにらめっこしながらビールを飲む人。雲ひとつない空に聳え立つ時計台を見上げ、激甘カフェを飲む気分は格別だ▼火、金曜日に立つプランタ市が目当てだった。長方形の場内を囲むようにトラックがバックで止められている。屋根があるので叶わないが上空から眺めれば、銀の荷台が花びら、展示販売されている木々が緑の花托、これまた大きな花のように見えるのでは—。昨夜の酒がまだ抜けていないかも知れないと思ったところで、おなかが空いた▼昔、取材で会った人が「荷物を降ろした後、セアーザのうどんで朝を済ませていた」と言っていたのを思い出した。暗いうちから働いて、明け方うどんの湯気に何を思うか。郷愁の風景—いい感じだ。ブラジル人に聞くと「あるよ」と即答。しかし、どうもセアーザ場外の話をしている。ランショネッチでは「向こうのバールで焼きそばを出しているよ」。若い日系人は「昔あったらしいけど…僕ら食べんもんね」と困り顔▼最後に聞いた日系オジサンから「ラーメンならあるよ」と意外かつ嬉しい返答。連れていかれたのは、荷台のカセットコンロで作るインスタントラーメン。味が読めるだけにちょっと落胆。値段は7レアルで、具に卵、ちくわ、何と豆腐まで入るという。すでに陽は高い。汗をカキカキ、おでんラーメンに挑むのもオツだが、寒い時期を待ったほうが旨いだろう。冬のセアーザにはオニオングラタンスープも出るとか。ぜひハシゴといきたい。(剛)