ニッケイ新聞 2013年3月9日
ノルデスチーノと日本人
わがパトロンよ、俺はノルデスチーノで
ここでは俺も移住者だ
地球の裏側で稼ぎまくっている
日本人と同じように
成功をめざしているんだ
ついに到着した
旅が終わって本当の日本人の大きな農園に
そこで仕事見つけた
あのすばらしい連中のもとで
あの風変わりな連中は言葉が違い
目は細くわしらとちがって
髪はまっすぐで黒光り
新しいところでは、マラニョン州立大学が2007年10月にシンポジウム(第4回)を開催しています。
ジェラルド・マジェラ・デ・メネゼス・ネットという研究者が「第二次大戦中(パラー州における)のコルデル文学における日本人」という論文を発表しました。ちょっと翻訳しながら紹介すると、
『本稿では、第二次大戦中下のコルデル文学に観られる日本人像を分析するものである。
コルデルとはリズムをもつ詩で、様々なテーマについて語られる、どちらかといえばポピュラールな階層向けの情報手段である。大戦中、コルデル本は国際ニュースを伝え、また、国内にあっては、枢軸国の行動を伝えるものである。この観点からすると、コルデル本は枢軸国の、特に日本のイメージを下げることになるかもしれない。というのは特にパラー州では大きな日系集団地があり、コルデル本には当時の大衆の日本人に対する反応が顕著なのである』
当時ベレン地方で歌われたコルデルは本稿の最初に登場させましたが、その後、北部や北東地方でも評価が変化していることは、紹介したコルデルでもはっきりしていますよね。もう少し続けます。
『ここ最近のパラー州における歴史学は、日本移民の研究に集約されている。それは日本移民のパラー州における経済的な功績に負うところが多い。現在でも続いているのが、トメアス、カスタニャール、サンタ・イザベル地方における農産物の生産であり、またベレンにおいては商工業面での功績である』
実は現在コルデル本を入手することがブラジルでも大変困難になっています。インターネットなどでも発注したんですが、散々待たされた挙句に、入手困難と、代金が払い戻されたくらいです。
そこで、底本として『ブラジル民衆本の世界』(御茶ノ水書房、初版1990年)を使用しました。ジョゼフ・M・Ruiten(サンパウロ大学コミュニケーション芸術学部助教授。当時筑波大学地域研究科客員教授)の原作を翻訳したものということになっていますが、表題の単行本を翻訳したものではなく、5名の執筆者が書き下ろしたり、既刊の論文に手を入れたりして、一冊にまとめたものです。
紹介したコルデル詩が7・7調や7・5調になっていないのは、訂正したくても原本が手に入らず、訂正できないため(原文が掲載されていて、多少手を加えたものもあります)。ごめんなさい。
また執筆者の一人河野彰先生が、FAPESP財団の招きで9月に来伯。グロバリゼーションにおける世界のポルトガル語というテーマで日伯文化連盟でも講演。お目にかかることができました。
「日本におけるポルトガル語教育」では、留学生に関する話。体格がよくてシンパチコ。間違いのないポルトガル語を話されましたが、コルデルに関しての質問には困惑していました。地元で直接コルデルを耳にしたことがある人間と、机上で識る人との違いでしょうか。(おわり)
写真=『ブラジル民衆本の世界』の表紙