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Valeが亜国での事業を中止=経済面のリスクを考慮=圧迫感じる伯企業は多数=待たれる両大統領の会談

ニッケイ新聞 2013年3月13日

 ブラジル有数の多国籍企業Valeが11日、アルゼンチンでのカリウム事業を中止すると発表したと12日付伯字紙が報じた。同国での事業に不安や懸念を抱えるブラジル企業は後を絶たず、改めて、ジウマ、クリスチーナ両大統領の会談の行方が注目されている。

 亜国でのカリウム生産と肥料製造を重要戦略の一つとしていたValeが、採掘用の工事の約45%を終えた後の事業中止を決めた。カリウムは資源大国のブラジルに欠け、国内の農業関係者が喉から手が出るほど欲しい肥料の原料の一つだ。
 Valeがカリウム事業を展開していたのは、2009年に8億5千万ドルで買い取った亜国メンドーサ州のリオ・コロラド鉱山だ。Valeとしては2014年下半期から年430万トンのカリウム採掘を始める予定で、それを使った肥料製造は同社の戦略事業の一つだった。
 ところが、亜国の高インフレや為替政策などの影響で、ここ数カ月の事業経費はドルベースで30%も値上がりした。また、亜国では採掘施設の建設を開始した時点で払い始めるIVAと呼ばれる税金を業務開始後に返してもらえるが、Vale側がIVAの払い戻しを前倒しするよう要請した件も、良い返事はもらえないままだった。
 Vale首脳陣は、2011年から通貨危機に陥り、インフレも続く亜国での事業は、利益還元率が低く、採算が取れないと判断。当初予算40億ドル、調整後予算は59億ドルに膨張したカリウム事業は、様々な懸念材料もあって2012年12月に停止され、見直しが進められていた。
 Vale側は亜国政府との話合いを重ね、7億ドルの経費削減に成功、15億ドルの税的優遇処置適用も求めたが、亜国政府は輸出に伴う売上の本国送金を強制、国外の株主への利益と配当の送金を大幅に限定するなどして、Vale側の意欲をそいだ。ブラジルの市場ではカリウム事業中止を好意的に受け止め、下落傾向にあった同社株は0・90〜1・44%値上がりしたという。
 亜国側はValeが同国内での事業を放棄したとみなし、メンドーサ州知事も直接・間接の雇用者が失業の危機に直面していると懸念。ベネズエラのチャベス大統領死去によって中止され、今月末か4月初旬にと交渉中の両国の大統領会談で解決策を見出せるよう願う声が高まっている。
 亜国では輸入の自動承認システム廃止以降、交易上の手続きが煩雑化して同国内の品不足も招いた。また、高インフレ抑制のために2、3月は商品の店頭価格凍結なども実施中だが、国内消費は冷え込む一方だ。9日付フォーリャ紙は、国内消費の冷え込みや経済活動の減速化は外国企業も圧迫し、同国に進出しているブラジル企業では、Valeやペトロブラスのような鉱工業、オデブレヒトやカマルド・コレアなどの建築、アウパルガッタスなどの衣類、BRF、JBSといった食料品など多部門で、減収や事業縮小といった問題が起きていると報じている。