ニッケイ新聞 2013年3月13日
【既報関連】日本を含む国外の教育機関に5年で約10万人の学生を派遣し、産業技術分野の人材育成と競争力強化をめざす伯政府の奨学金プログラム「国境なき科学」(Ciencia Sem Fronteiras)で、現在のところすでに日本の13の大学や研究機関で、26人の学生(学部生、博士課程、ポスドク含む)の受け入れが先行的に始まっていることが大使館の発表でわかった。
ただし、これら学生の留学は公募での選抜ではなく、ブラジル側の実務担当機関のCAPES(高等人材養成業務統括所)やCNPQ(国家科学技術開発審議会)に個別に申請して認められたもの。
担当する大使館広報文化班の髙田行紀一等書記官によれば、今後、公募による学部生の留学は3月にブラジル内で選考を行い、5〜6月の日本国内選考等を経て9月から開始となる予定だ。
日本側では約80の大学と研究機関で年間約1300人分の受け入れ枠が確保されていたが、実際にはこれより大幅に少なくなる見込みで、「現状では博士、ポスドクを合わせても100人に満たない数になる」と言う。
その理由について高田書記官は「一言で言うと、応募者が少ないから」と話す。また、「そもそも1300人という数を当初見込んでいたわけではなく、あくまで受け入れ可能数。各大学等に要請し、その受け入れ可能数を単純に積み上げた数字」と説明した。
高田書記官によれば、現在日本にいるブラジル人留学生数は272人(2012年5月現在)。「4年間で割ると毎年70人程度が日本へ行っている計算で、すぐにこれが20倍になるのは困難」。
また学部生の場合、応募者の英語力不足やスコアの不備などが目立ったといい、書類確認や選考の過程で大幅に候補者が減ったことも原因のようだ。
博士課程やポスドク(博士課程を終了し、常勤研究職になる前の研究者)の場合は、今後年3回の申請受付が行われる。むしろ、日本側ではこちらの方で多数の留学生を受け入れようとしていたようだが、そもそも応募自体が学部よりも少なく、実際には学部よりも減る傾向だ。
この状況を受け、大使館は留学の拡大に向けて「英語力がある学生に情報が行き届くよう、重点的かつ戦略的な広報の推進」「日伯の大学間や研究所間の研究協力プロジェクトの質的、量的拡大」などを対策として挙げている。
「JICAなどとも協力しながら、プロジェクトにおける学生や研究者の日本への派遣を奨励することで、博士課程やポスドクの留学生が増えれば」と高田書記官は説明する。
また、プロジェクトでは学生が留学先で企業でのインターンシップ(実務研修)を行うことが奨励されている。ヒュンダイ、ジェネラル・エレトリック、ボーイング社などは受け入れを表明しており、日本の企業のインターンシップへの協力依頼も既に行われている。