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ローマ法王=フランシスコ就任へ=南米から初の法王誕生=教会内部の改革期待され=同性愛や中絶には否定的

ニッケイ新聞 2013年3月15日

 12日にバチカン市国システィーナ礼拝堂で始まったローマ法王選挙「コンクラーヴェ」は13日に決着がつき、アルゼンチンのホルへ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(76)が第266代法王に選ばれた。アメリカ大陸からは初選出の新法王は「フランシスコ」と名乗る。14日付伯字紙が報じている。

 法王選挙は80歳未満の枢機卿によって行われ、全体の3分の2(今回は115人中77人)以上が同一人物を選ぶまで投票を繰り返し、新法王が決まるとそれを知らせる白い煙が上がる。初日と2日目の午前は「未決定」を知らせる黒い煙が上がったが、現地時間13日午後7時5分(ブラジリア時間午後3時5分)、5回目の投票後に白い煙が上がった。
 選ばれたのは本命視されたイタリア、ミラノ教区のアンジェロ・スコラ枢機卿でも対抗馬とされたサンパウロ市のオジロ枢機卿でもなく、アルゼンチン、ブエノスアイレス教区のホルへ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿で、法王名は「フランシスコ」と決まった。投票結果は明らかにされていない。
 この決定を、オジロサンパウロ市枢機卿の兄でサンパウロ州トレド在住のフラヴィオ氏は「意外だ」と語った。ベルゴリオ枢機卿は今回の法王選挙の有力候補とは見られていなかったからだ。「もっと任期の長くなる若い法王を期待した人が多かったのだろう」と分析するフラヴィオ氏は、「米大陸からの法王選出は欧州に偏っていたローマ法王庁の軸を動かすことになるのでは」と発言。さらに「軍事政権時代を経た国の司教が法王に選ばれるのは大事なことだ」と語った。
 1936年にブエノスアイレスで生まれた新法王は、1958年にイエズス会に入会し、98年にブエノスアイレス教区大司教となった。2001年に枢機卿に任ぜられたが、外出時は通常の神父の服装でバスや地下鉄を利用、同国内では「司祭」と呼ばれるのを好む。15世紀後半以降にキリスト教が伝わり、世界最大の信者数を誇る一方、最も保守的とされる南米のカトリック教会を穏健的な思想へ導いている影響力の大きな人物で、2005年のコンクラーヴェでは2位につけていた。
 米大陸からの新法王選出は、ローマ法王庁内での汚職や教会内での性的スキャンダルなどに揺れるカトリック教会の浄化や、欧州出身者に偏りがちだった法王選出を全世界のカトリックの現状に合わせるべきとの声などを反映したと見られる。法王名「フランシスコ」は、清貧と規律を求めたことで有名なアッシジの聖フランシスコとイエズス会創始者の一人のフランシスコ・ザビエルから取られたようだ。
 新法王は多くの宗教書物の執筆や「激貧と大きな貧富の差を生む社会システムは人権侵害だ」と貧困者寄りの立場を取ることで知られているが、妊娠中絶や安楽死に関しては否定的。2010年にクリスチーナ政権が同性愛結婚を認めようとした際も強く反対し、同大統領から「前時代的だ」との批判を受けた。