ニッケイ新聞 2013年3月16日
2010年5月に起きた弁護士の中島メルシアさん殺害事件の陪審裁判が14日に結審し、恋人で弁護士事務所の共同経営者でもあった元軍警のミザエル・ビスポ・デ・ソウザ被告(43)に懲役20年の実刑判決が言い渡された。15日付伯字紙が報じている。
事件が起きたのは10年5月23日。サンパウロ州グアルーリョスの祖母の家で食事をしたメルシアさんは、自宅に戻ろうと祖母の家を出たのちに行方不明となり、家族から捜索願が出された。
メルシアさんは祖母の家を出る直前にミザエル被告から電話を受けたとの家族の証言や、同被告の車がその時間帯にメルシアさんの祖母の家の近くに停めてあったことなどからミザエル被告に嫌疑がかかったが、同被告は「メルシアさんは担当した顧客に脅されて困っていたから迎えに行った」などと供述し、犯行を否定していた。
だが6月10日、サンパウロ州ナザレ・パウリスタの池の底にメルシアさんの車が沈められていたのが発見された。翌日発見されたメルシアさんの遺体には銃弾を2発受けた跡があったが、実際には生きたまま沈められ、水死したことなどが判明。警察は、ミザエル被告の靴に池にあるのと同じ藻が付着していたことなどを証拠に、同被告の逮捕に踏み切った。
グアルーリョスの裁判所で11日にはじまった陪審裁判の模様は、テレビやラジオ、インターネットで生公開された。裁判でも被告と担当弁護士は「池にさえ行っていない」など、犯行を一貫して否認、それに対して原告が「嘘つき」などと反論して激しい口論が繰り返され、初日の中継が中断されるといったハプニングも起きていた。
公判4日目に行なわれた陪審員投票では、7人中4人が票を投じた時点でミザエル被告がメルシアさんを殺害した犯人と断罪された。また、「被告が抵抗できない状況での犯行か」との問いも4人目、「残虐性」「動機の卑劣性」に対する投票でも5人目で有罪と判断された。
レアンドロ・ビッテンコート・カノ裁判長は、ミザエル被告が嘘をついたことは「責任逃れの逃げ口上」として2年を加算し、懲役20年を言い渡した。裁判長は判決文を読む最中、感極まって泣きはじめている。
裁判は結審したが、この判決だと2020年にセミ・アベルト(昼間外出)の申請が可能になるため、原告側のロドリゴ・メルリ・アントゥネス検事は「これでは刑が軽過ぎる」として上告する構えだ。他方、被告弁護を担当したサミル・ハダジ氏も、「ブラジル裁判史に残る過失だ」として上告する予定だという。