ニッケイ新聞 2013年3月19日
【既報関連】記録的な穀物の増産に沸くブラジルでは、輸送上の弱点がますます顕著になっている。短期的な解決策はありえない中、4日間で2千キロを走ってきたトラック運転手が、荷降ろしにさらに2日を要するという実態を17日付エスタード紙が報じている。
37トンの大豆を積んだトラックが、マット・グロッソ州(MT)イピランガ・ド・ノルテの農場を出たのは8日。サンパウロ州サントス港まで約2千キロの旅は11日夜一区切りついたが、旅の荷を降ろし終えたのはさらに2日後の13日だった。
22年間トラックのハンドルを握っているソニウド・アウヴェス・デ・ソウザさんは、整備不足の道路や高騰する通行料金、港での渋滞(順番待ち)などで泣くトラック運転手のほんの一例だ。
ソウザさんが片道6日かけて運んだ荷はMT産大豆だが、今年は大豆やトウモロコシの収穫が早めに始まったため、サントス港やパラナ州パラナグア港に向かう道路や港周辺はここ2週間ほど、例年より早い渋滞に見舞われている。渋滞でトラックの荷が降ろせないため、15日のサントス港には積荷を待つ船が76隻あったという。
13年の穀物収量は、1億8356万トン(12年の1億6617万トンの10・5%増)と見込まれている。輸送の55%がトラック、35%が鉄道、10%が水運という大豆は、昨年比23・6%増の8206万トンの収穫が予想されており、路上に繰り出すトラックもそれに見合って増えるはずだ。
ところが、ブラジルの道路網や鉄道網、港湾施設の拡張や改善は一向に進まず、ジウマ政権が昨年発表した大型整備計画も、国会承認さえ取れてないものがあるという。
農業界では農地拡大と生産性向上の努力が奏功し、収量が増える一方なのに、鉄道や道路網の整備、水運能力拡大などの事業は一向に進まないのがブラジルだ。将来を見通した計画立案も不十分な上に、事業開始が遅れ、終了時には次の渋滞開始という悪循環もあり得る。
ルーラ政権で導入された経済活性化計画(PAC)も、実行されてないとかいつ終わるか判らないというものが続出し、必要経費は雪達磨式に膨れ上がる一方だ。
大干ばつで60億レアルの損害が見込まれるバイア州西部と比べれば、豊作に沸いて輸送で泣く中西伯などはまだましかも知れないが、鉄道や水運も含む輸送網整備は計画から実行まで時間を要するため、輸送問題が農家を圧迫する状態は短期間では解決しない。輸送問題が未解決なら、ジウマ政権後半の経済活動も足かせがはまったままの状態となる上、経費削減努力もなく減税して資金不足を招けば、次期政権以降も効果的な政策実行が難しくなる。