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9年生に数学力急落現象=深刻な専門教師の不足=長期的視野の教育も必要

ニッケイ新聞 2013年4月2日

 公立学校の5年生から9年生に至る過程で、数学の学力が大きく落ちる現象があることがわかった。1日付フォーリャ紙が報じている。
 これは「トードス・パラ・エドゥカソン」という非政府団体が、連邦政府の主催する全国学力テスト「プロヴァ・ブラジル」に基づいて分析した結果、判明したものだ。
 それによると、2007年に5年生だった公立学校の生徒で、その学年にふさわしい基礎学力を備えていた人は、ポルトガル語で26%、数学で22%いた。
 ところが4年後、9年生になった生徒たちの中で学年相応の学力を持っていた人の割合は、ポルトガル語では23%とわずかに減っただけだったが、数学では12%と急激に落ち込んだ。
 これは、公立学校の9年生の88%が、パーセントの計算が出来なかったり、平面図形の面積が出せなかったり、棒グラフが読み取れなかったりすることを意味する。
 その原因として主に指摘されるのは、公立学校における数学教師の不足だ。サンパウロ総合大学(USP)の数学学力改良センターのロジェリオ・オズワルド・シャパリン教授は、「数学の得意な若者はより収入の高い技師や銀行員になりたがる傾向が強く、数学教師になりたいと思う人が少ない」と指摘する。
 ブラジルは公立学校の教師の給与が低いことで知られ、中でも数学は、全国で6万5千人と最も教師の数が不足している。
 また、公立学校の9年生は淵の縁に立っているとする声もある。ブラジルの場合、9年生までの基礎教育課程には市立の学校と州立の学校が並存するが、中等教育(日本でいう高校)以上は市立校が完全になくなるため、市立校の生徒の学力不足を改善するための方策がとられにくいという。
 だが、教育省国立教育研究院(Inep)のルイス・クラウジオ・ダ・コスタ院長は、今回のこの調査結果について「公立校の生徒の学力は落ちていない」と反論する。同院長によると、「プロヴァ・ブラジル」での9年生の学力は、07年から9年の間に10段階評価で3・5から3・9にあがっている。
 一方、「プロヴァ・ブラジル」で最高点を記録したサンパウロ州セルトンジーニョの市立校「ジョゼ・ネグリ」では、教師と生徒の入れ替わりが少なく、3人の数学教師が10年以上の長期にわたって生徒たちを見守ることで成功した同校の例は、今回の問題解決へのヒントの一つになりそうだ。