ニッケイ新聞 2013年4月3日
3月の貿易収支が2001年以降で最低の1億6400万ドルの黒字で終わり、第1四半期(1〜3月)の赤字51億1500万ドルという数字と共に、政府関係者を不安に陥れたと2日付エスタード紙が報じた。 商工開発省によると、3月の貿易額は、輸出193億2300万ドル、輸入191億5900万ドルで、貿易収支はわずか1億6400万ドルの黒字に止まった。 この数字は、輸出209億1100万ドル、輸入188億9100万ドルで20億2千万ドルの黒字を計上した前年同月比91・9%減という厳しいもので、3月としては、2億7400万ドルの赤字だった01年以来最低の記録だ。また、3月第5週は1億6500万ドルの黒字との報告から、3月第4週までの貿易収支は赤字だった事も明らかとなった。 第1四半期は、輸出508億3900万ドル、輸入559億8900万ドルで51億5千万ドルの赤字。第1四半期の貿易収支が赤字となったのは4億400万ドルの赤字だった01年以来で、四半期毎の集計を取り始めた1993年以来、最悪の結果となった。 2008年の国際的な金融危機は国内消費の加熱などで乗り切ったブラジルだが、欧州経済危機の影響やドル安レアル高による国内企業の国際競争力低下などで起きた経済活動の減速化は、0・9%で終わった昨年の経済成長率などにも表れた。 貿易収支悪化を加速した要因の一つは石油製品の輸入拡大と、昨年末からの為替の動きだ。ドル安レアル高は輸出力をそぎ輸入を促進、その逆は輸出力を増すがインフレ拡大を招くため、操作には細心の注意を要す。 景気刺激のための減免税や経済基本金利(Selic)引き下げ、中銀の為替介入などが思うように機能せず、インフレ上昇機運の中で第1四半期の貿易収支が史上最悪の赤字で終わった事は政府の懸念材料だ。財務省は、年末の貿易収支黒字予想を170億ドルから150億ドルに修正。同省は黒字額が100億ドルを割る可能性もあると見ているが、専門家からは、農業コモディティの相場は4月に回復の見込みだが、工業製品の輸出回復は困難で、貿易収支黒字は年40億ドル程度との声も出ている。 貿易収支が大幅な赤字で終わった事で懸念されるのは、サービス収支や国外への利益送金などを含む経常収支の悪化だ。2011年の経常収支は国内総生産(GDP)の2・12%の赤字だったが、国外への旅行者の支出拡大などで、今年1、2月の経常収支は180億ドルの赤字を計上。従来は経常収支の赤字を上回っていた生産部門への外国直接投資はこの間、75億ドルに止まり、赤字額を下回った。 ブラジルの外貨準備高は3764億ドルだから心配ないと言う人もいるが、今年2月までの12カ月間の経常収支赤字はGDPの2・79%に達しており、外国直接投資でカバーできない状態が続けば、中長期の経済活動にも悪影響を及ぼす可能性は否定できない。