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SC州新集団地を訪ねて=第39回県連ふるさと巡り=第2回=ジョインビレ=7割奉仕、最古の消防隊=世界唯一ボリショイ学校

ニッケイ新聞 2013年4月4日

隊員(右)から消防博物館の説明を受ける一行

隊員(右)から消防博物館の説明を受ける一行

 3月23日、バスは別々にジョインビレ市内観光に向かい、4号車はブラジル最古の消防隊本部を訪れた。創立は約120年前の1892年と日本移民よりも古い。約1200人も隊員がおり、うち7割は無償奉仕で参加しているという。ドイツ移民が多いこの町独特の市民意識の高さを伺わせるブラジルでは特異な集団だ。
 15歳で青年消防ボランティアとして参加し始めて、後に専従職員になったボロースキさんが説明役となり、消防博物館を案内した。
 発足当時、木造家屋が多かった同町では、頻発する火事に悩んでいた。当時のブラジル政府は南伯の遠隔地への行政が及ばず、すでに工業が盛んで資産家がいたこともあり、「移民たちは祖国のやり方を真似て自治消防組織を作った」という。当初の消防隊員「資格」は有志が買うシステムだったので、初期隊員の多くは名士であり、その大半が街路名に名を残している。
 ボロースキさんいわく、全伯5570市のうち消防隊があるのはわずか600市のみで、その大半は州政府の運営だ。この町のように自治方式なのは37市しかなく、うち30市はSC州に集中するので、同消防隊の影響で近隣に広まっていったことが伺われる。
 「我々は一切国からお金をもらっていない。全て町の企業や篤志家からの寄付でまかなっている」とし、「この方式が国全体の模範となることを願っている」と胸を張った。
 南麻州ノーバ・アンドラジーナ市から6人参加しているうちの一人、上代憲一郎さん(二世、70)は「すごい歴史を持っているボンベイロだね。子供向けの火災予防セミナーを駐車場でやっていたが、ああやって啓蒙活動に力を入れるのは大事だね」と関心していた。
 その後、一行はロシア以外では世界唯一のボリショイ・バレエ学校を視察した。公益法人組織で、政府の文化補助や企業の寄付で運営されており、ほぼ全員が奨学金を貰って授業を受けているという。
 「なぜここに設立されたのか」と学校職員シモニ・シウバさんに聞くと、ここでは昔からダンス・フェスチバルが開催され、「ダンスの都」として有名だったことが背景だという。それに加え、同バレエ団の花形アレクサンデル・ボガチレンと深い親交があった当時のルイス・エンリッケ・ダ・シウベイラ市長(現上院議員、PMDB)が上手に話をまとめた。
 クラシック科目では必ずピアノ奏者とダンス教師が一組になって授業をするので、教師が102人(多くがロシアから派遣)もいる。生徒は297人、亜国やロシアからも来ているとか。「ロシアのボリショイはすでにプロの能力のある人材しか入れない。ここのように基礎から教える学校は実はロシアにもない。つまり世界唯一」とか。クラリッセ・マツナガなど日系人の生徒名もある。
 9歳から毎日5時限を週5日、8年がかりでクラッシックとモダンの両方を教授する。00年に創立し、すでに卒業生300人が輩出され、北米、欧州の有名バレエ団に就職したという。
 夫婦で参加した、サンパウロ州議を6期も務めた下本八郎さんは、「世界レベルの教育機関を地方都市に作ったのは大したもの。サンパウロにあってもよかったね」との感想を漏らした。
 ドイツ系色の強い地域らしく、近郊のアラクアリ市にBMWがブラジル初のエンジン工場を建設すると最近発表した。24日付地元紙ジアリオ・カタリネンセは、米国の南カリフォルニア州のBMWを取材して3頁の特集記事を出し、「SC州の場合も同様に発展するに違いない」と地元の期待を高めるルポを載せていた。(つづく、深沢正雪記者)