ニッケイ新聞 2013年4月5日
衛生部門の陶器、金属製品で知られるDecaが、アルゼンチンでの生産の停止と撤退を決めたと4日付エスタード紙が報じた。3月にはValeが同国での事業を停止しており、ブラジル企業の亜国離れが進みそうだ。
ブラジルでは陶製の洗面台や金属製の蛇口のシェアが格段に大きく、亜国にも生産拠点を構えていたDecaが3日、同国での事業からの撤退を発表した。
創業100年以上の歴史を持つ亜国企業のPiazzaを1995年に買収、Deca Piazzaの銘柄で生産・販売を行っていたブラジル企業の撤退は、このところ表面化してきていたラ米や欧州の進出企業の業務縮小や撤退の一例だ。
ブラジル企業としては3月にカリウム事業の中止を発表したValeや、食肉会社のJBS、ペトロブラスなどが、事業縮小や撤退を決めているが、これらの企業の大半が理由としてあげるのは、同国での高インフレによる生産コスト上昇が国際競争力を殺(そ)ぎ、操業や運営を困難にしている事だ。また、2011年に亜国が導入した保護貿易的な輸入制限で、本国などで製造した製品や部品の調達が困難な事、2012年からは本国への利益送金も難しくなった事なども、生産や販売といった活動を維持出来なくなって来た主な理由に挙げられている。
Decaの場合もその辺の事情は一緒で、工場内の炉はすでに火が落とされ、140人の従業員を解雇。同社のサイトは「立ち上げ作業中」の文言が流れるだけになっており、撤退前に原材料の供給会社などへの支払いを済ませる準備も行われているという。
ブラジル企業は亜国内での事業に向け、Valeのカリウム事業の60億など、総計100億ドル相当の投資を行ってきた。だが、投資の結果が損失となって返って来る例まで出てきたのでは、事業継続は困難だ。
同国の12年のインフレ率は今年1月に10・8%と発表されたが、野党側は、実際には25・6%で過去5年間の累積は164%などと告発。国際通貨基金(IMF)ももっと信憑性のある数字を報告するよう求めているが、クリスチーナ大統領は商品価格を凍結してインフレ鎮静化を図るなど、強引な手口が目に付き、デフォルト直前との情報も流れている。
同国では、保護貿易のためにとられた輸入制限などが原因で、食品供給が国内需要に追いつかないといった問題も起きているが、2日付エスタード紙によると、同国政府が1日に発表した食料品の輸入緩和策の対象は、欧米や中東諸国からの高級食材が大半で、ブラジル製品で自由化されたのは缶詰のトウモロコシとパイナップルだけだ。
4月1日までだった商品価格の凍結期間は延長されたと言うが、同国に進出した企業の業績は悪化、通商額も激減しブラジルからは輸入超過の状態など、隣国との問題解決のためには、早急な対策が待たれている。