ニッケイ新聞 2013年4月5日
平安時代中期に書かれたと伝わる随筆『枕草子』の全編ポルトガル語翻訳版「O LIVRO DO TRAVESSEIRO」(Editora 34、614頁、2013年)がこのほど出版された。 訳者は脇坂ジェニ、織田順子、橋本マダレーナ・コルダロ、吉田ナナ・ルイーザ、橋本リカさんの5人で、いずれもサンパウロ大学(USP)日本文化研究所での勤務経験がある日本語、日本文学の研究者だ。 脇坂さん(87、二世、バウルー出身)は、中南米での『万葉集』研究第一人者。本書刊行に至った経緯について「枕草子は、日本の古典文学における最初の随筆で先がけともいえる作品。小説などのポ語版はたくさんあるが随筆はこれまでなく、翻訳する価値があると考えた」と語る。 作品には、背景の歴史を知らない当地のブラジル人が読んでも理解できるよう、当時の宮廷の様子などを解説する注釈も豊富に加えた。「(作者の)清少納言は明敏な女性で、自分の感情を出しすぎずに書いている」と作品を評する。 5人それぞれ専門が異なり、本業の合間を縫って作業に当たったため仕上がりには12、3年を要したという労作だ。 先月23日にサンパウロ市内の書店で出版記念会が行われ、既に販売(78レ)されている。