ニッケイ新聞 2013年4月9日
1992年に起こったカランジルー刑務所での大量虐殺事件の陪審裁判が、事件から20年以上経った8日から開始された。だが一方では、100人以上の囚人を射殺した軍警たちが断罪され、投獄されると思っている人は少ないとの調査結果も出ている。7〜8日付伯字紙が報じている。
カランジルー刑務所での虐殺は、1992年10月2日、サンパウロ市北部にあり、当時南米最大の刑務所での囚人同士のケンカが暴動に発展し、死者111人の大惨事となったことで知られている。暴動を鎮めようとした軍警が102人の囚人を射殺したほか、9人が囚人によって刺殺された。
軍警による対処をめぐり、世論では強い批判が起きていたが、本格的な裁判が行われず、2001年に総司令官だったウビラタン・ギマリャンエス氏が一度懲役632年の実刑判決を受けながらも、06年2月に無罪となっていた(同氏は同年9月に暗殺された)。カランジルー刑務所は2002年に閉鎖された。
今回の裁判は被告の数が多いため、4度に分けて行われる。サンパウロ市西部バラフンダの犯罪法廷で最初に行われている裁判は、カランジルー刑務所の1階で15人の囚人を殺害した26人の軍警に対するもの。今年の後半に予定されている次の裁判は、同刑務所2階で78人の囚人を殺害した29人の軍警に対して行われる。18人の囚人が殺された3階、4階には24人の軍警がいたとされており、全部で79人の軍警が殺人罪で裁きを受ける。
ダッタフォーリャが4月に行なった同裁判に関する調査では、51%が「有罪になる」と思っているが、「懲役刑となって投獄される」と思う人はわずか10%しかいないことが判明している。これは、国民の中にある「ブラジルの刑法は甘い」という意識が表れたものと分析されている。
回答者の65%は「被告の罪は問われるべき」と思っているが、「懲役刑になるべきだ」は41%に止まった。事件直後の92年10月の調査と比べると、「事件の責任は軍警にある」は38%から30%に減り、「軍警の行為は正しかった」が29%から36%、「軍警の証言を信じる」も39%から47%に上がっている。
カランジルー事件の裁判では、州都第1コマンド(PCC)の報復処置を防ぐため、被告の名前を公開しない。サンパウロ州では2012年に軍警が少なくとも107人が殺されたが、そのほとんどを企てたとされるPCCは、カランジルー事件で軍警に敵意を抱いたサンパウロ州タウバテー刑務所の囚人が形成したと言われている。PCC結成当時のタウバテー刑務所長はカランジルーでも所長だった人物で、2005年に刑務所内で殺害された。