ニッケイ新聞 2013年4月9日
「私は残念でしょうがないんですよ、日系社会がつぶれていくのが」—。美容・化粧品グループの大手「池崎商会」の池崎博文会長(85、熊本)が、リベルダーデ区のニッケイパラセホテル(上野リカルド社長)を買収し、5月1日から所有者となることがニッケイ新聞の取材でわかった。買収金額、経営状態は明かしていないが、ホテル名の変更も検討、改修工事も行われるとの話もある。経営不振が噂され、多額の負債もあるとされる同ホテルが、コロニアを代表する商業人池崎氏の手腕により、どのように変わるのかが注目される。
「コロニアを強くするための、僕の最後の仕事」。池崎氏いわく「いまや唯一の日本人を代表するもの」であるホテルの全面改善を図ることで、東洋街、ひいては日系社会の再活性化につなげたい考えを強調した。
「いまやコレアーノとシネスばかり。店に日本の名前をつけて日本人の女性を従業員に雇う。日本人街のように見えるがそうじゃない」と東洋の現状を憂いた。
故上野アントニオ下議の父、上野米蔵氏が創業した同ホテルは、1981年にパウロ・マルフィサンパウロ州知事(当時)がテープカットして落成した。オープン以降、上野一族の経営でリベルダーデの主要ホテルとして営業を続け、日本人や日系人の常宿のような存在だった。
しかし近年は経営が悪化し、3月25日通りの〃帝王〃で、中国生まれの帰化人、ラオ・キンシャン氏が購入するとの噂が飛び交っていた。
池崎氏は「昨年4月の時点で(ラオ氏の)買収が99%決まっていた」と話す。それを知った池崎氏は上野社長に直談判。買収に歯止めをかけようとした。
「もうダメと言われたが、無理を言って1週間待ってもらった。日本人で買う人がいないか探したが、2週間待っても3週間待っても現れなかった。仕方がないから、自分に売ってくれと言った」との経緯を語った。