ニッケイ新聞 2013年4月10日
国連の食糧農業機関(FAO)が昨年から国際的な食糧価格は低下と発表する中、ブラジルでは食物インフレが継続し、小売業者の販売低下にも繋がっていると7〜9日付伯字紙が報じた。
FAOやブラジル地理統計院(IBGE)によると、食糧の国際価格は2012年10月以降低下しているが、ブラジルでは2011年8月から値上がり続きで、食糧価格は16・5%上昇。同期間中の19カ月の国際価格は9%低下している。
今年の食料品と飲料価格は、1月1・63%、2月も1・52%上昇。この数字は経済が年7%以上成長をした2007年末の1・97%以来の高率で、2月までの年間累計は2008年のリーマンショック以降最高の11・7%だ。国際食糧価格はこの間、2・24%のデフレだった。
ブラジルの食物インフレは消費者も実感しており、ダッタフォーリャが3月20、21日に166市2653人を対象に、ここ2週間で食料品が値上がりしたかと聞いたところ、69%が値上がりしたと回答。変わってないは22%、値下がりしたは5%だった。
3月20、21日は、同月8日に発表された基礎生活用品セット(セスタ・バジカ)の免税効果が出るはずの時期だが、トイレットペーパーなどの衛生用品で55%、清掃用品で56%が値上がりを実感している。
食物インフレのトップは拡大消費者物価指数で106%値上がりしたトマトで、食卓に不可欠の米やフェイジョン、小麦も、31・6%、24・7%、12・6%値上がり。米やフェイジョン、小麦の作付面積は1990年より減って、需要増をカバーできず、輸入も増えている。
トマトの場合は作付面積が倍増、輸入も4%程度だが、価格上昇が止まらず、サンパウロ市のセアザ(市場)での価格は、2月にキロ4・11レアルに上がり、パスコア後は9レアル。キロ12レアルで売るスーパーもある。
これに悲鳴を上げたのは、イタリア料理店などだ。平日200食、週末400食が出るサンパウロ市のネロスは、週1トンのトマトを使っていたが、4月に入ってから、トマト抜きメニューと食べ残しを避けようとの呼びかけでインフレに対抗。また、このところアルゼンチンなどに買出しに行く人達が増えたが、当局は隣国での買い物は検疫も経ていない密輸に当たるとして取り締まる意向だ。
消費の70%が国産品のブラジルの食物インフレは、干ばつなどによる収量変化と輸送網の不備、16・6%の大手農家が生産量の75・7%を占有というシステム上の問題などが招いたもの。政府資金が家族農まで届きにくく、税金や人件費が高く、輸送網も充分機能しない事が招く生産コスト高は、国際市場での顧客を米国などに取られる原因ともなっている。
2月までの小売販売が年間累積で4%減ったのは、食物インフレでその他の品の購買力が落ちた故との見方は9日付エスタード紙が報じている。