ニッケイ新聞 2013年4月13日
年金受給資格を得た後も正式雇用の形で働く人たちへの年金を厚遇する法案が10日に上院の委員会で了承され、政府が反対に回っている。11、12日付伯字紙が報じている。
一度確定した年金をより有利なものと取り替えることを認める「デザポゼンタドリア」法案は、10日の上院の社会問題委員会(CAS)で可決された。同法案は、就労年数が35年を超えたり60歳以上になったりして年金受給資格を得た後も働き、国立社会保険院(INSS)に納税している人の年金支給額の見直しを認めるものだ。
たとえば、2010年までに35年勤務し、同年60歳を迎えたが今も働いている人の場合、現行法で受け取る年金額は1015レアルだが、新法が成立すると、支給額が200レアルほど増える。新しい支給額は、最初の年金支給額が決まった後に行ったINSS納税額に準じて決める。
この法案は、既に年金を受け取っている人が再就職する場合にも適用される。これまでは再就職しても年金額の算定基準は変わらなかったが、これも見直される。
さらに、年金受給開始後に再就職する場合は年金の受給を辞退するのが原則だが、新法案には、年金を続けて受け取っていた場合の年金は返還しなくても良いという一文が入っている。
連邦総弁護庁(AGU)のグスターヴォ・アウグスト・フレイタス・ダ・リマ氏によると、年金の見直しに関してはこれまでも多くの訴訟が起き、高等裁判所が受給者に有利な判断をしていたが、最近は高等裁も年金の見直しは憲法に関わる問題であることを認め、最高裁の判断を待つ姿勢を示しているという。
法案提案者のパウロ・パイム上議(労働者党・PT)は、「社会福祉についての法案をより平等なものに変えていかなければならない」と言う。社会福祉問題の専門家のギリェルメ・カルヴァーリョ氏も同法案を評価し、「社会保障は現状の2〜3倍のものであるべきだ」と語っている。
この法案は上院で異論がなければ下院での審議に回されるが、懸念する声も決して小さくない。懸念のひとつは財政面の問題で、年金受給資格を得ても働く人が約50万人いる現状では、年金見直しに491億レアルが必要とされている。
イデーリ・サルヴァッチ政局調整担当長官は11日、「政府は『デザポゼンタドリア』法案を注視していく」とし、政府が同法案を阻止する意向であることを示唆した。ガリヴァルディ・アウヴェス・フィーリョ社会保障相は、同法案でINSSに700億レアルの負担増と推定している。