ニッケイ新聞 2013年4月16日
ベネズエラで14日、3月5日のチャベス大統領の死去に伴う大統領選挙の投票が行われ、ニコラス・マドゥーロ暫定大統領が僅差で当選と15日付伯字紙が報じた。野党候補のエンリッケ・カプリレス氏は不正があった可能性を指摘し、票の再集計を要請している。
チャベス前大統領の死後40日を経て行われた選挙は、50・66%対49・07%という僅差で終わった。投票率は78・71%で、昨年10月のチャベス氏対カプリレス氏による選挙の時の80%とほぼ同率だったが、チャベス氏自身も55%対44%でしか守れなかった強硬な反米左翼というチャベス主義政権はここへ来て、路線変更を迫られている。
チャベス氏の死後、巷では「今回の大統領選はマドゥーロ氏が余裕で勝つ」という見方が一般的だったが、カプリレス氏は支持率を急速に上げ、4月第1週に16・5%ポイント、12日も7・2%ポイントあった両者の差は、1・6%ポイントという僅差となった。
開票率99・1%の時点の得票数は750万5338対727万403で、その差は23万票。カプリレス陣営は開票結果の発表前から不正が行われた可能性を指摘し、選挙管理委員会に票の再集計を求めている。米州機構もこの要請を認めているが、選挙管理委員会は結果は正当で見直し不要と回答、マドゥーロ氏も勝利を宣言した。
マドゥーロ氏は、高卒で地下鉄公社に就職。学生運動や組合活動で頭角を現し、1999年に国政参加。2005年に国会議長、06年に外務大臣、12年からは副大統領を務めていた。
ただ、僅差での勝利は新政権が抱える課題解決が容易ではない事も見せつけた。12年が20・1%、今年は推定40%超の高インフレを始めとする経済問題では、国内総生産の10%に及ぶガソリン代の補助縮小、物価政策の見直しなどが急務だ。また、人口10万人当たりの殺人被害者が73人という治安の悪さも懸念材料だ。
キューバやニカラグアなどに廉価で売られる石油の扱いや対米関係も、チャベス政権外相を6年間務めたマドゥーロ氏が避けて通れない問題だ。石油産出国としての恩恵は、チャベス政権での教育や医療の無償化、低所得者向け住宅建設などの社会福祉政策に表れたが、石油を安く売る代わりに公共医療や調査などで見返りを受け取るという方策は、国内からの批判の声と国外からの期待との折り合いが難しい。チャベス政権の国営化政策を免れてきたペトロブラスのような多国籍企業も、今後の政権の出方が気になるところだ。
チャベス氏と親交を保ち、同氏の死を「友人の喪失」と表現したルーラ前大統領やジウマ大統領は、同国のメルコスル加入でも積極的に動いた事で知られる。両極化が更に進むと見られる同国の新大統領は両者の支援に感謝、ブラジルには民主主義国としての同国に対する国外からの批判への擁護を期待しているという。