ニッケイ新聞 2013年4月18日
糖尿病治療用のインシュリンの国内製造を発表するために16日にミナス州を訪問したジウマ大統領が、アントニオ・アナスタジア同州知事を前に「電力料金は十分に下がらなかった」と発言し、民主社会党(PSDB)を暗に批判。インフレ抑制のための経済基本金利(Selic)引上げも小幅と発言したと17日付伯字紙が報じた。
インシュリンの製造を担う工場での祝賀式にミナス州知事と共に出席した大統領が、電力料金値下げは十分ではなかったと発言したのは、PSDB所属のアナスタジア知事が連邦政府の協力を感謝した直後だった。
大統領は挨拶で、ブラジルは工業化政策遂行能力があり「ブラジルの時代はまだ過ぎていない。否、今がブラジルの時代だ」「国際的に困難な状況を通過しているのみと知るべき」と強調した。これらの肯定発言は、15日夜行った「01年に節電政策を取り入れた悲観主義者」発言で暗示したPSDBに対する批判を込めたものだ。電力料金への言及でも、ミナス州の電力公社(Cemig)が電力料金値下げのための契約更新に応じなかった事を暗に皮肉っている。
大統領によれば、水力発電所への投資は既になされたものだから、ブラジル工業界の国際的な競争力向上のための必須条件であり、国民にも益する料金引き下げは可能なはずなのだが、12日付エスタード紙には、MP(暫定令)579号による電力料金値下げの効果は、その後の調整で減少したと報じられている。
電力料金を見直したのは、PSDB知事が統治するミナス州のCemigとサンパウロ州のCPFLで、調整後の料金には、CPFLの高圧3(大口消費者用)クラスでMP適用前の0・85%安など、値下げ効果を実質失ったものもある。
料金の再調整は火力発電利用で増大した経費などを埋めるためで、高圧電力はCPFLがMP前の0・85〜6・27%安、Cemigが同9・86〜17%安に逆戻りした。家庭用電力はCPFLがMP前の19・28%安、Cemigも同16・01%安で、工業用より小幅な値上がりとなったが、11日にはリオ州のAmplaの料金調整も承認された。火力発電に伴う経費の増大は全電力会社に共通の悩みで、再調整は必至だ。
17日付フォーリャ紙によれば、来年のW杯での電力確保のため、水力発電所の稼働率を落としてダム貯水量の減少を避ける方針も確認済みで、火力発電の利用は継続する。火力発電を滞りなく行うために支出された補助金は来年から消費者料金に転嫁されるはずで、今年のインフレ抑制要因となった電力料金値下げが、来年のインフレ圧力となる可能性も高い。
インフレ抑制の意味で予想される経済基本金利の引上げは中央銀行が決めるべきものだが、ジウマ大統領は16日に「金利引上げは最小幅で足りる」と発言。BRICS会議に続く越権発言で、中銀への信頼性回復は一段と困難になりそうだ。