ニッケイ新聞 2013年4月23日
パラグアイで21日、大統領選挙が行われ、保守系のオラシオ・カルテス氏が当選し、コロラド党が5年ぶりに政権を奪還した。22日付伯字紙が報じている。
カルテス氏は、フェデリコ・フランコ暫定大統領と同じ左翼の真正急進自由党から立候補したエフライン・アレグレ氏を破って当選した。カルテス氏の得票率は95%開票の時点で45・9%で、36・9%のアレグレ氏を突き放した。同国は決戦投票制度がないため、カルテス氏がこのまま当選となる。アレグレ氏の陣営も50%開票の時点で敗戦を認めた。
カルテス氏の勝利により、コロラド党は2008年にフェルナンド・ルゴ氏(変革のための愛国同盟)に政権を奪われて以来、5年ぶりに政権を奪還した。それ以前の同党は、アルフレッド・ストロエスネル氏による独裁政権(1954〜89年)を含む60年間に渡り、パラグアイでの政権をとりつづけていた。
大統領選は保守政党の復帰という結果となったが、カルテス氏は当選後の演説で、「パラグアイに新たな時代の空気をもたらすこと」を約束した。カルテス氏が政治家に転身したのは、2009年と最近だ。成功した企業家で、特に同国屈指の人気サッカー・クラブ、リベルタッドのオーナーとしても有名な同氏は、経営者としての手腕を買われて出馬した。
一方、2000年には麻薬取引、10年にはマネーロンダリングで告発されている。さらに煙草の違法取引にも関与しているとされ、ブラジル人が吸う煙草の13本に1本は同氏のグループによる密輸品だという。このように疑惑の多いカルテス氏だが、今回の大統領選に関して、米州機構の選挙委員会は特に不正はなかったとしている。
大統領選挙が成立したことで、ルゴ元大統領が12年6月に弾劾されて以来剥奪されていた南米共同市場(メルコスル)と南米同盟(ウナスル)の参加資格を取り戻す条件が整った同国は、新政権発足後に各国との協議をはじめる考えだ。
また、かねてから親伯派で知られていたコロラド党の復権でブラジルの立場は有利なものになる。ルゴ氏弾劾後に大統領に就任したフランコ氏は、イタイプ発電所余剰電力のブラジルへの販売差し止めを示唆していたが、カルテス氏の当選でこの問題への圧力は軽減される。
また「ブラジガイオス」と呼ばれるパラグアイに進出したブラジル人農民も恩恵を受けそうだ。ルゴ政権ではブラジガイオスの土地接収の動きが生じて、同国の土地なし農民との抗争も起きたが、コロラド党は、ブラジガイオスは「大豆生産に貢献している」として、かねてから優遇していた。