ニッケイ新聞 2013年5月1日
北伯にある人口140万のトカンチンス州は誕生から25年を迎えるが、大豆の豊作に沸く同州には、やしの葉でふいた家やランプで灯りをとる18、19世紀の生活をする人々が数多く残っていると4月28日付エスタード紙が報じた。
1988年誕生の最も新しい州トカンチンス。ゴイアス州北部の2億7762万平方キロの土地の住民達が、パウマスを州都とする歩みを始めてから四半世紀が過ぎた。
1950年代のブラジリア建設で急速に発展したゴイアス州南部は、農産物加工なども含む工業が定着、水力発電所建設などの大型プロジェクトも進んだが、1600年代初めにイエズス会の宣教師達が入った同州北部は、文化、産業のどの部分を見ても、旧態依然の状態が続いていた。
そんな中、当時、連邦下議だったウィルソン・シケイラ・カンポスの尽力で誕生したのがトカンチンス州だ。セアラ州セルトン生まれで、ゴム採取や小間物売りなどもしてきたカンポスは、軍政下でのハンガーストという思い切った行動で新州誕生を実現させた。
州知事となったカンポスが1990年代に接収して企業家らに分割した土地は現在のサンパウロ市を上回る面積だったが、カンポスの意図を汲みきれない土地所有者達は、南大河州の大豆生産者や多国籍企業に、シケイランジアとも呼ばれる地域の土地を売り飛ばした。
シケイランジアは大型機械を駆使する大豆畑に生まれ変わり、今農年は260万トンと予想される同州の大豆生産の大半を担っているが、大型機械が縦横に走る畑を見守る農夫達の家は土を固めた床にやしの葉の屋根や壁。電気や水道もなく、油を入れたランプで灯りをとる農家が大半だ。
8人の子供を抱え、畑作業で得る月収150レアルと生活扶助250レアルで暮らすライムンダ&ペドロさん夫妻は典型的な例で、栄養失調の子供やヨード不足で甲状腺障害を持つ親、最新鋭の大型機械での収穫作業後はランプで過ごし、素焼きの漉し器で飲み水を用意する様子は18、19世紀の生活そのままだ。
貧困者と先住民が人口の60%を占める同州には、より広い土地と人口を擁すピアウイ州より多い割り当て金が支給されるが、必要な人には金が届かず、州都ですら工業や商業が育たない。豊作の大豆も中国企業などに買い上げられ、庶民達は糊口を凌ぐ毎日だ。
州渉外局の担当者は、石油のロイヤリティの分配比率が変更され、富や食料配布の不均衡などが解消される事に期待というが、他人の褌で相撲を取る施政では、新たな四半世紀への道は厳しい。